逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 蓮さんが忙しいのは、友記子の質問をかわすためじゃなく、本当のことだった。

 長野から戻った翌日、蓮さんは深夜に帰宅し、私を起こさないようにソファベッドで眠っていた。その姿を見て、私は主寝室に戻り、それ以来またひとりで眠っている。

「え、それじゃ、エルネストエンタープライズの人? すごい、ホワイトな大企業じゃん」

「まぁ……そうだね」

 そのとき、ふと気づいた。私はいつの間にか、蓮さんのことを「イケメン」とか「エリート」とか、そんなわかりやすいラベルで語らなくなっていた。

 たしかに彼は、見た目も肩書きも申し分ない。けれど、彼の本当の魅力は、そんな表面的なところじゃなくて中身にこそある。だから誰かに彼のことを話すとき、自然とそういう説明が出てこなくなるのだ。

「で、どこで出会ったの?」

 さっき私がブルスケッタを用意したお返しのつもりなのか、友記子もバゲットに前菜を盛りつけて、私の皿にそっと置いてくれた。見ると、スパイスが容赦なく振りかけられている。さすが激辛好きの友記子、遠慮という言葉を知らないらしい。

 私は、さりげなくクラッシュド・ペッパーを皿の隅に寄せながら、答えた。

「駅で……酔っ払いに絡まれているところを助けてもらったの」

「ありえん」

 友記子は即座に首を振り、信じられないという顔をした。
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