逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 お母さんは少し寂しげに「そう」とつぶやいた。その表情を見て、何だか心がきゅっと痛む。私は思わず口を開いた。

「また、近いうちに来ます。ね、蓮さん」

 彼を見上げると、蓮さんも頷いた。──その眼差しは、いつもの穏やかで優しい、彼のものだった。

「わかったわ。暗くなるから気をつけてね。薫さん、またぜひいらして。蓮がいなくても、いつでも歓迎よ」

 お母さんも玄関を出て、門まで見送りに来てくれた。そして私たちが角を曲がるまで、ずっと手を振り続けてくれていた。

 別荘地の静かな道を、私と蓮さんは無言で歩く。陽が落ちて、すっかり冷え込んだ空気の中、街灯がぼんやりと私たちの足元を照らす。

 車に乗り込んでしばらくのあいだ、蓮さんは無言のまま、ハンドルに手を置いていた。

 やがて、ふと私の方を見て口を開く。

「薫……今から海を見に行かない?」

 私は頷いた。蓮さんが、なにか大切なことを伝えようとしている──そんな気がしたのだ。
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