逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「……さっきはありがとう」

 一瞬、何のことかわからなかったが、すぐに思い出した。『田舎の生活』を書いたのは自分ではないと宣言したことだろう。

 ついさっきのことなのに、まるで何日も経ったかのように遠く感じる。

「いいよ、そんなこと。それより……」

 航だけに聞こえるように、声をひそめる。

「……出雲さんって、仕事ではいつもあんな感じなの?」

 航は少し不思議そうな表情を浮かべ、答えた。

「ああ、そうだよ。堂々としていて、礼儀正しくて、厳しい」

 なるほど。前に航が、「出雲さんに弄ばれて捨てられるだけだ」と言ったのは、あのビジネスモードの蓮さんしか知らなかったからか……。

 確かにあの強気な蓮さんなら、そう誤解されても仕方ないかも。

「薫……本当にごめん。時間も全然ないし、何か俺にできることがあったら……」

「大丈夫」私は即答した。「豪雪地帯育ちの人間は、強いんだから」

 それに、今の私には覚悟がある。

 もう迷わない。やるべきことは、もう決まっていた。
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