逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 思い描いていた主人公に近い雰囲気の女性が歩いてくるのが見えて、私はこっそり彼女を目で追った。

 名前も知らないその女性を見ているうちに、主人公のイメージが広がっていった。

 髪はショートボブで、昔買ったブランドのバッグを手入れしながら大切に使っている。少し気が強くて、納得いかないことがあると、相手が誰であっても意見を言うタイプ。会社の後輩から慕われているけれど、自分は人に頼るのが苦手。けれど、婚約者にだけは甘えることができた。そんな、芯のある女性……。

「そして、外席で飲むコーヒーが好き」

 両手で持ったタンブラーを見つめてつぶやいた。自分で描くドラマの主人公に、自分の要素をひとつだけ入れるのが、ずっと夢だった。

 手で顔を覆う。次々とイメージが溢れ出してきて、圧倒されそうだった。

 私は気持ちを落ち着けようと、冷たい空気を深く吸い込んだ。

 ──だけど、冷えた空気も、濃いカフェインも、熱いシャワーも、大好きな散歩も、何一つとして私の気を紛らわせてなんてくれない。

 どんな思考も、感覚も、すべてあの人に繋がってしまうのだ。

 透き通った11月の青空を見上げる。

 ああ、私はこんなにも、蓮さんのことが好きなんだ。
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