逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 驚いて「え、本当ですか!?」と聞いた。確かに、ずいぶん飲んだはずなのに、カップはいつも満たされていた気がする。

「まあ、集中してるのはいいことよ。私も今日は、本を読ませてもらってるし」

 広瀬さんがデスクに置いた文庫本は、見覚えのある表紙だった。

「その本、春木賢一朗の新作のミステリー……」

 広瀬さんは頷く。

「言っておくけど、これは趣味の読書じゃなくて仕事だから。この小説をドラマ化したいんだけど、作者の素性が謎だらけなの。メディア化のオファーもすべて断ってるし」

 彼女は本を手に取り、通常なら著者プロフィールが記載されているカバーの折り返しを開いた。しかし、そこには何も書かれていなかった。

 「デビュー以来、ずっと話題の作家なのに、出版社も一社だけだし取材にも応じていない。まるで彼自身がミステリーなのよね」

 広瀬さんと話しているうちに、私は自分がとても空腹なことに気づいた。そういえば、朝からコーヒーしか飲んでいない。「いただきます」と言って、どら焼きの袋を開けた。

「春木賢一朗の本、読んだことある?」

 広瀬さんが尋ねる。

「ええ、まあ」
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