逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 知里さんは、「企画でも脚本でも、私がOKを出して跳ねられたことは一度もない」と言っていたが、私が記念すべき失敗第一号を飾る可能性はゼロではない。

「まあ、そのときは知里さんの記憶に刻んでもらえばいっか」

 小声でつぶやいて、思わず笑ってしまった。自分を笑えるようになったことが、少し嬉しかった。

 コーヒーを飲み終え、まだ時間があったので外に出た。青空の下、ひんやりとした風が心地よくて私は思わず深呼吸をする。ふと目に入ったベーカリーの看板に、「本日スペキュロスあります。お一人様3袋まで!」と書かれているのを見て、ついつい引き寄せられて店に入った。

 知里さんと、スパイス好きな蓮さんのことを思い浮かべながら、無意識のうちにスペキュロス3袋を手に取っていた。だけど、「蓮さんには、もう、こういうことはしないほうがいいかも」と思い直して、1袋を戻した。それから、冷蔵ケースにあったサーモンとアボカドのベーグルサンドを今日のお昼用に買い、店の外に出た。

「このベーグルサンドを食べるときには、すべてが終わっているはずだ」

 決意を込めてベーグルサンドを空に掲げ、私は心の中でそうつぶやいた。
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