逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 友記子は私の前にアイスコーヒーを置いた。

「はい、差し入れ。冷たいから目が覚めるよ。それに、百年の恋も冷めちゃうかもね」

「恋してないし。そのフレーズ、いいかも。寝ぼけてるせいか、やけに良いセリフに思える。一応メモしておこう……」

 私はバッグから手帳を取り出して、ヨロヨロとペンを走らせた。脚本のネタやセリフなど、思いついたことを何でも書いておく雑記帳だ。いつか自分のシナリオに活かせたらいいと思って書き続け、すでに16冊目が終わろうとしている。

 手帳をしまうと、私はアイスコーヒーを一気に吸い込んだ。カフェインと冷気で、頭が一気に冴えわたる。

「起こしてくれてありがとう。コーヒーもね。おかげでばっちり目が覚めたよ」

「ふふ、私を崇めたまえ」

「さぁ、締め切りまであと2日、頑張らないと」

 さっきまでのおどけた表情が消え、友記子は眉間にわずかなしわを寄せて、私の隣のチェアに腰掛けた。

「ねぇ薫、言うべきか迷ってたんだけど聞いて。脚本家挫折して、総務に入った私が言うことじゃないかもだけど……」

 上半身を私のほうに寄せて、目を覗き込む。

「薫の書いた脚本、倉本先生が少しだけ手直しして、自分の名前で発表してるよね。こんなに頑張ってるのに、薫の名前はどこにも出てこない」

 私は少しやるせなくなって、友記子から目をそらし、うなずいた。
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