逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 蓮さんが手を引き、再び額をそっと重ねてきた。それから、低くかすれた声で囁くように言った。

「……薫が俺を(・・)煽ったんだから、あとでちゃんと責任を取ってもらうから」

 その瞬間、甘い震えが全身を駆け抜ける。蓮さんの言葉が、今までとは違う響きを持って心に深く染み込んでいった。

「おやすみ」私の髪にそっとキスをして、蓮さんは静かに部屋を後にした。

 ──蓮さん、「俺」って言った。普段の「僕」、ビジネスモードの「私」に加えて、まさかのシークレット「俺」だ。思わず両手で顔を覆い、「コンプリートしちゃった……」と小さく呟く。

 耳の奥には、まだ蓮さんの言葉が残っている。心も体も溶けてしまいそうな感覚に包まれ、まるで足のつかない泉にゆっくりと引き込まれるようだ。

 その甘く切ない余韻を胸に刻みたくて、蓮さんにもらった写真集をぎゅっと抱きしめた。外国のインクの匂いにさえ、蓮さんの気配を感じる。私は目を閉じ、しばらくその幸福感に身を委ねていた。


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ついに……! やっと……!
不器用なふたりに、熱くて切ない瞬間が訪れました。
ドキドキしながら読んでもらえたら嬉しいです。
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