逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 友記子はこわばった表情のまま、消え入りそうな声で続けた。

「その後の惚気(のろけ)話を聞きたいのは山々なんだけど……」

「……何かあったの?」

 オフィスを見回しながら尋ねる。制作部の航たちはパソコンに向かっているものの、落ち着かない様子で視線をそわそわと彷徨わせている。経理を兼務する総務部の席は空っぽで、オフィス全体に張り詰めたような不穏な空気が漂っていた。

「それが……」

 友記子がそっと耳打ちした。

「営業部長が……先月の入金を持ち逃げしてしまったらしいの」

* * *

 その日、スタジオ・マンサニージャのオフィスは、創業以来最悪とも思えるほどの重苦しい空気に包まれていた。

 私もパソコンを開き、新たに任された先生名義の連続ドラマの脚本を進めようとしたものの、集中なんてできるはずもなかった。

 倉本先生が鬼の形相でコーナーオフィスから出てくるたび、オフィス内の空気はピリピリとした緊張感に包まれた。夕方になると、取引先銀行の担当者が訪れ、会議室で何やら深刻そうに話し込んでいるようだった。
< 359 / 590 >

この作品をシェア

pagetop