逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 クレジットを諦めて退職する意向を倉本先生に伝えた数日後、先生は新たに経験豊富なシナリオライターを二人雇い入れた。案件の増加を見込んでの増員なのだろう。

 制作部の負担は増えるどころか、むしろ軽くなっている様子で、私が抜ける影響はほとんどなさそうだった。それはいいことだけど、ちょっとだけ寂しい気もする。

 私自身はというと、引き継ぎ作業をほぼ終え、新しく入った社員に仕事を教えたり、友記子の業務を手伝ったり、航からの質問に答えたりと、実に穏やかな日々を過ごしていた。

「薫がいなくなっちゃうなんて、信じられないんだけど」

 顔を合わせるたび、友記子が本当に寂しそうに言う。そのたびに私は「これからも、いつでも会えるよ」と優しく声をかけ、彼女の肩を抱きしめた。


* * *


 午後ずっと考えた末、やはり知里さんに春木賢一朗のことを聞いておくべきだという結論に達した。家に着いたら、蓮さんが戻る前に彼女に連絡してみよう。

 どう切り出すかで悩んでいたけれど、その心配は杞憂に終わった。18時、私が退社するとすぐに、知里さんから着信があったのだ。

「薫、少し話せる?」

「大丈夫ですよ」と答え、近くの公園に足を向けた。ここなら落ち着いて話せそうだ。

 スマホからは、いつになく弾んだ知里さんの声が聞こえてくる。

「ちょっと信じられない話なんだけど、聞いてくれる?」
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