逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
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 待ち合わせ時間が迫っていたので、私たちは知里さんが指定した、静かな路地裏に佇むビストロへと向かった。

 石造りの壁につたが絡まる一軒家風の店。ドアには手書きで「OPEN」と書かれた小さな看板が掛けられていて、素朴で温かい雰囲気を醸し出している。ドアを開けると、バターやハーブ、スパイスの香りに、グリルされた肉の芳ばしい匂いが混ざり合い、心地よく鼻腔をくすぐった。

 店内を見回すと、オープンキッチンの横にある4人がけの席で、知里さんがこちらに向かって手を挙げているのが見えた。

「知里さん」

 コートをハンガーに掛けて、私たちは知里さんのテーブルへ向かう。

「ボートに乗ってたら、時間ギリギリになっちゃいました。すみません」

「あなたたち、この寒空の下でボートに乗ってたの? まったく、ロマンチックもここまで来ると感心するわね」

 知里さんが唇の端を上げてからかうように微笑むと、蓮さんはちょっと照れたように私の方を見てから、穏やかに言った。

「少なくとも、僕はとても楽しめたよ」

「私も」

 私たちのやりとりを聞きながら、知里さんは苦笑いを浮かべて首を振った。

「聞いているだけで糖分過多になりそう。デザートはいらないわね」
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