逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「はい、ええ、久しぶりね。……春木作品? もちろん今でも映像化したいと思ってるわよ。……え? ちょっと待って、どういうこと?」

 一瞬、スマホの向こう側から楽しそうな笑い声が漏れ聞こえ、その直後に通話は突然切れたようだった。

 知里さんはスマホを見つめたまま、しばらく動かなかった。彼女の表情には、明らかな動揺が浮かんでいた。

「……知里さん?」

 私がそっと声をかけると、彼女はわずかに首を横に振った。信じたくない──そう訴えるような目をして、かすれた声で呟く。

「ダークレイス社で……春木賢一朗の次回作の映像化が決まったって……」

 私は息を呑む。驚きすぎて、言葉が出てこない。

 部屋の空気が、私たちの間に重く沈み込んだ。しばらくして──知里さんがゆっくりと視線を上げ、まっすぐに私を見た。その瞳には、疑惑と失望が複雑に絡み合っている。

「薫……祐介くんのお笑いコンビ、ダークレイス社のオーディションに通ったんですってね。昨日、祐介くんから聞いたわ」

 話の意図がつかめず、私は戸惑いながらも「ええ……」と曖昧に頷いた。
< 469 / 590 >

この作品をシェア

pagetop