逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 そのとき、これ以上ないナイスなタイミングでガラスのエントランス扉が開いた。目をやると、アルバイトの青木くんが大あくびをしながら「……ザリヤース」と入ってきた。

 多分、彼は若者語で「おはようございます」と言っているのだ。なんにしろ、話の流れをぶった切ってくれて、グッジョブ青木くん!

 友記子が青木くんに、「寝癖すごいんだけど、まさかその頭で外歩いたの? お願いだから違うって言って」と話しかけている間に、私は深く大きく息を吸って、吐いた。

 私も青木くんに挨拶を返して、友記子に向き直った。深呼吸を1回すれば、ずいぶんと気持ちは落ち着く。

「大丈夫、そのうち有名になって、『あの頃は苦労しましたねぇ』って笑い話にしようと思ってるから。今はそのための苦労ネタを貯めてる最中なの」

 私がにっこり微笑むと、友記子も眉を下げて「そっか」と笑った。

「もっと苦労ネタが必要だったら、いつでも私に言ってね。薫のためにいろいろ用意してあげるから!」
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