逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
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「厚焼き玉子ができたよ」と、蓮さんがキッチンから声をかけてきた。

 今朝のメニューは、蓮さんがつくり置きしたレンズ豆のサラダと根菜のコンソメスープ、それに蓮さん得意の厚焼き玉子。土鍋炊きのご飯は絶賛蒸らし中だ。副料理長(スーシェフ)の私は、キウイフルーツをスライスして、今日の役目を無事終えた。

 タイマーが鳴って、蓮さんが土鍋の蓋を開ける。中からは、香ばしい蒸気とともにキラキラと輝く炊きたてご飯があらわれた。

「薫の実家から送られてきた新米、本当に何度食べても美味(うま)すぎる」

「ふふ、そうでしょ。米どころと名高い町だから」

 食事のあと、私が洗い物係を引き受けた。

 食器を棚に戻してからリビングに行くと、蓮さんは風が通る縁側で、気持ちよさそうに文庫本を読んでいた。少し肌寒いけれど、蓮さんはこれくらいの気温が好きだということも、私はもう知っている。

 文庫本のページをめくるとき、ちらりと表紙が見えた。アラスカをカヌーで旅するエッセイで、私も読みたいと思っていた本だ。蓮さんが読み終わったら貸してもらおう。
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