逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 彼女は、ワインボトルの入ったショップバッグを掲げ、そして……蓮さんの肩に手を置いた。

 その様子を見ていると、胸の奥に、不安とも苛立ちともつかない感覚が広がってゆく。

「ねぇ、出雲くん。明日休みだし、いいでしょ? 出雲くんと一度飲みながらおしゃべりしてみたいと思っていたの」

 ネイルが彩る彼女の指先が、蓮さんの二の腕あたりをなぞるように動く。周囲から見れば、完全に恋人同士に見えるだろう。

 そのとき、急にこちらを振り返った蓮さんと目が合った。

 彼は女性の手をさり気なく振りほどき、迷いのない足取りでこちらに近づくと、私の肩を抱き寄せた。

「広瀬さん、紹介します。僕の婚約者の薫です」

 蓮さんは穏やかだが、はっきりとした口調で言った。

「薫、こちらは会社の広瀬さん」

 蓮さんの体が背中にそっと触れ、筋肉のしなやかな感触と温もりが伝わってくる。反射的に体を起こそうとした私を、蓮さんの腕が優しく捉え、逃がさないように静かに力を込めた。
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