幼馴染み、四重奏。
〇私立黒岡学園高校の校舎・二年一組の教室(放課後)
涼「び……っくりしたぁ! 来るなら言ってよ!」
ジャージに着替えた涼、スポドリを飲み、「ぷはっ」と落ち着いてから、文句を言う
玲司、「すまない」と柔らかい笑顔
玲司「いつもすぐに返信をくれるから、メッセージを見てくれたと思い込んでしまった。いきなり押しかける形になってしまったな。申し訳ない」
昴「学校側には連絡したぞ」
涼「僕には来てない。部長辺りで止まっちゃったんだ」
T「演劇部の部長は顧問の先生から知らせを受けたが、〝即興劇の練習になるから〟と敢えて伏せたのだった」
玲司「しかし、こうして直に見学できて良かった。感激したよ。堂々とした演技だった」
昴「頑張ってたな」
涼「年下の君に言われるのは面映ゆいけど有り難う。……伊織ちゃん?」
伊織「あ、うん、良かったよ、凄く。その……」
涼、教室を一旦出る
廊下に集まっていた生徒達に、
涼「はい散った散った! お茶とかはいいから! ね!」
涼、戻ってくる
涼「御免ね。みんな他校の人が来て興奮しちゃってるみたいで」
昴「演劇部だから観られんのなんて慣れてるだろ」
涼「ここうちの学校だからね。うちは留学生の受け入れとかも特に無いし」
伊織、立ち上がる
伊織「ちょっと、お花を摘みに」
玲司「確か、廊下を右に曲がった突き当たりだね」
伊織「有り難う、玲司さん」
伊織、去る
涼「……御免。今の、何の意味?」
玲司「お手洗いだよ」
昴「こんくらい知っとけ」
涼「はい……」
涼、赤面して俯く
〇私立黒岡学園高校の校舎・二階の廊下(放課後)
伊織、教室から遠ざかった所で立ち止まる
伊織「先程から、熱心な視線を送られている、そこの殿方。私に何か御用ですか?」
男子生徒「気づいてたのか。……いや、ほんと見違えたな。別人みてぇ」
近くの空き教室から、男子生徒(中学の同級生)が出てくる
伊織、にこっとスカートの裾をつまみ上げて一礼する
男子生徒、表情をゆがめて、
男子生徒「中学時代のお前を知ってるから違和感すげぇけど、知らなくても絶対に違和感あるわ。その制服、似合ってねえよ」
伊織、笑みを保つ
男子生徒「何か身内のコネ推薦で入学できたって聞いたけど、身の程って知ってる? 今からでも退学しちまえよ」
涼、男子生徒の後ろからやってきて、伊織の肩を抱く
涼「姫。迎えが遅れて申し訳御座いません。あちらでお茶の準備ができております」
男子生徒「おい、お前からも何か言ってやれよ。ちょっと実家が金持ちだからって、御嬢様ぶっても――」
涼「学校主催の交流会なんだ。この人は確かに同じ中学だけど、もう別の高校の人なんだよ。それくらいは弁えて、節度と礼儀を持とうね」
涼と伊織、立ち去る
〇私立黒岡学園高校の校舎・二階の廊下(放課後)
離れた所で、涼、伊織の方から手を離す
涼「御免。もうちょっとスマートに言えば良かった」
伊織「ううん。殴り合いとかに発展しなくて良かった」
涼「しないよ、流石に」
伊織「同じ学校の涼ちゃんが一番大変でしょ。何か嫌がらせを受けたりしてない?」
涼「大丈夫。別のクラスだし、僕は演劇部にのめり込んでるし。彼は帰宅部だし」
伊織「帰宅部……なんだ」
伊織、先程の同級生を思い出す
中学時代はバスケ部でそれなりに有名だったが、今はくすぶっているように見えた
伊織、止まって、自分の制服を見下ろす
伊織「やっぱり変かな。私に、これ」
涼「そんな事は無い。凄く似合ってるよ」
涼、同じように立ち止まり、ぐるんと振り向いて力説する
伊織、小首を傾げる
伊織「聖カメリアに見える?」
涼「見える。今、中学の制服を着たら、きっとそっちの方が似合わないよ。それに気づいた? 演劇部の女の子達、伊織ちゃんの事を熱心に見ていたよ。立ち居振る舞いや所作を吸収したくてね」
伊織「そうなの?」
涼「そうだよ。何より、伊織ちゃんが頑張って受験して合格したんじゃないか。もっと胸を張って」
涼、「あ」と思い出す
涼「紗織おばあ様、具合はどう?」
伊織「ピンピンしてるよ。今、確か韓国に行ってる。アイドルの追っかけで」
涼「海外に? 行っても大丈夫なの?」
伊織「まあ本人は元気だし。母さんも付いていってる。母さんの方がヒイヒイ言ってるくらい」
伊織、中学時代の事を思い出す
〇(回想)中学時代の涼と伊織
夕方の公園のベンチで、並んで座って話している
涼「えっ、聖カメリア!? あの超御嬢様学校の!? どうしてまた……絶対に受からないよ、筆記はどうにかなっても面接があるんだよ? それに環境が違い過ぎる。きっと辛い思いをするよ」
涼は缶ジュースを飲んでいるだけだが、伊織はスナック菓子をポリポリと食べながら、
伊織「まあ、な。似合わないのは、分かってっけど」
涼「何で急に……黒岡は駄目なの?」
伊織「おばあちゃまが、OG推薦が使えるからって……母さんが入らなかったから、私には、制服を着て欲しいって」
涼「去年まで、そんな事、言ってなかったじゃないか」
伊織「定期健診の結果が良くなかったって。母さんは〝しなくていい〟って言ってくれた。けど……やってみたい」
涼、眉尻を下げて、
涼「伊織ちゃんには合わないと思うよ。無理して入れても、辛いのは伊織ちゃんだよ」
伊織「まあ、そうなんだけどよ……」
〇(回想終了)
〇私立黒岡学園高校の校舎・二年五組の教室(放課後)
涼、誰もいない適当な教室に招き入れる
涼「それを聞けて安心したよ」
伊織「また遊びに来て。おばあちゃまがお土産たくさん買ってあるの」
涼「うん。ぜひ」
涼、改めて伊織の姿を見る
昔より背筋はピンと伸びて、髪も綺麗に整えている
涼「……さっきの彼とは伊織ちゃんには、聖カメリアは合ってたんだね。結局、泣き言や愚痴のメッセージも来なかったし」
伊織「高等部から入学した生徒って珍しいから、ある程度は大目に見てもらえているの。珍獣扱いもされているだろうけれど」
T「ちなみに食の話題が多いため、一部では〝貢ぎ甲斐のある人〟としても有名である」
涼「伊織ちゃんならどこでもやっていける! って、幼馴染みなら言ってあげるべきだったなぁ。御免ね」
伊織「ううん。お互い高校デビュー成功できて良かったじゃない。それに――」
涼「び……っくりしたぁ! 来るなら言ってよ!」
ジャージに着替えた涼、スポドリを飲み、「ぷはっ」と落ち着いてから、文句を言う
玲司、「すまない」と柔らかい笑顔
玲司「いつもすぐに返信をくれるから、メッセージを見てくれたと思い込んでしまった。いきなり押しかける形になってしまったな。申し訳ない」
昴「学校側には連絡したぞ」
涼「僕には来てない。部長辺りで止まっちゃったんだ」
T「演劇部の部長は顧問の先生から知らせを受けたが、〝即興劇の練習になるから〟と敢えて伏せたのだった」
玲司「しかし、こうして直に見学できて良かった。感激したよ。堂々とした演技だった」
昴「頑張ってたな」
涼「年下の君に言われるのは面映ゆいけど有り難う。……伊織ちゃん?」
伊織「あ、うん、良かったよ、凄く。その……」
涼、教室を一旦出る
廊下に集まっていた生徒達に、
涼「はい散った散った! お茶とかはいいから! ね!」
涼、戻ってくる
涼「御免ね。みんな他校の人が来て興奮しちゃってるみたいで」
昴「演劇部だから観られんのなんて慣れてるだろ」
涼「ここうちの学校だからね。うちは留学生の受け入れとかも特に無いし」
伊織、立ち上がる
伊織「ちょっと、お花を摘みに」
玲司「確か、廊下を右に曲がった突き当たりだね」
伊織「有り難う、玲司さん」
伊織、去る
涼「……御免。今の、何の意味?」
玲司「お手洗いだよ」
昴「こんくらい知っとけ」
涼「はい……」
涼、赤面して俯く
〇私立黒岡学園高校の校舎・二階の廊下(放課後)
伊織、教室から遠ざかった所で立ち止まる
伊織「先程から、熱心な視線を送られている、そこの殿方。私に何か御用ですか?」
男子生徒「気づいてたのか。……いや、ほんと見違えたな。別人みてぇ」
近くの空き教室から、男子生徒(中学の同級生)が出てくる
伊織、にこっとスカートの裾をつまみ上げて一礼する
男子生徒、表情をゆがめて、
男子生徒「中学時代のお前を知ってるから違和感すげぇけど、知らなくても絶対に違和感あるわ。その制服、似合ってねえよ」
伊織、笑みを保つ
男子生徒「何か身内のコネ推薦で入学できたって聞いたけど、身の程って知ってる? 今からでも退学しちまえよ」
涼、男子生徒の後ろからやってきて、伊織の肩を抱く
涼「姫。迎えが遅れて申し訳御座いません。あちらでお茶の準備ができております」
男子生徒「おい、お前からも何か言ってやれよ。ちょっと実家が金持ちだからって、御嬢様ぶっても――」
涼「学校主催の交流会なんだ。この人は確かに同じ中学だけど、もう別の高校の人なんだよ。それくらいは弁えて、節度と礼儀を持とうね」
涼と伊織、立ち去る
〇私立黒岡学園高校の校舎・二階の廊下(放課後)
離れた所で、涼、伊織の方から手を離す
涼「御免。もうちょっとスマートに言えば良かった」
伊織「ううん。殴り合いとかに発展しなくて良かった」
涼「しないよ、流石に」
伊織「同じ学校の涼ちゃんが一番大変でしょ。何か嫌がらせを受けたりしてない?」
涼「大丈夫。別のクラスだし、僕は演劇部にのめり込んでるし。彼は帰宅部だし」
伊織「帰宅部……なんだ」
伊織、先程の同級生を思い出す
中学時代はバスケ部でそれなりに有名だったが、今はくすぶっているように見えた
伊織、止まって、自分の制服を見下ろす
伊織「やっぱり変かな。私に、これ」
涼「そんな事は無い。凄く似合ってるよ」
涼、同じように立ち止まり、ぐるんと振り向いて力説する
伊織、小首を傾げる
伊織「聖カメリアに見える?」
涼「見える。今、中学の制服を着たら、きっとそっちの方が似合わないよ。それに気づいた? 演劇部の女の子達、伊織ちゃんの事を熱心に見ていたよ。立ち居振る舞いや所作を吸収したくてね」
伊織「そうなの?」
涼「そうだよ。何より、伊織ちゃんが頑張って受験して合格したんじゃないか。もっと胸を張って」
涼、「あ」と思い出す
涼「紗織おばあ様、具合はどう?」
伊織「ピンピンしてるよ。今、確か韓国に行ってる。アイドルの追っかけで」
涼「海外に? 行っても大丈夫なの?」
伊織「まあ本人は元気だし。母さんも付いていってる。母さんの方がヒイヒイ言ってるくらい」
伊織、中学時代の事を思い出す
〇(回想)中学時代の涼と伊織
夕方の公園のベンチで、並んで座って話している
涼「えっ、聖カメリア!? あの超御嬢様学校の!? どうしてまた……絶対に受からないよ、筆記はどうにかなっても面接があるんだよ? それに環境が違い過ぎる。きっと辛い思いをするよ」
涼は缶ジュースを飲んでいるだけだが、伊織はスナック菓子をポリポリと食べながら、
伊織「まあ、な。似合わないのは、分かってっけど」
涼「何で急に……黒岡は駄目なの?」
伊織「おばあちゃまが、OG推薦が使えるからって……母さんが入らなかったから、私には、制服を着て欲しいって」
涼「去年まで、そんな事、言ってなかったじゃないか」
伊織「定期健診の結果が良くなかったって。母さんは〝しなくていい〟って言ってくれた。けど……やってみたい」
涼、眉尻を下げて、
涼「伊織ちゃんには合わないと思うよ。無理して入れても、辛いのは伊織ちゃんだよ」
伊織「まあ、そうなんだけどよ……」
〇(回想終了)
〇私立黒岡学園高校の校舎・二年五組の教室(放課後)
涼、誰もいない適当な教室に招き入れる
涼「それを聞けて安心したよ」
伊織「また遊びに来て。おばあちゃまがお土産たくさん買ってあるの」
涼「うん。ぜひ」
涼、改めて伊織の姿を見る
昔より背筋はピンと伸びて、髪も綺麗に整えている
涼「……さっきの彼とは伊織ちゃんには、聖カメリアは合ってたんだね。結局、泣き言や愚痴のメッセージも来なかったし」
伊織「高等部から入学した生徒って珍しいから、ある程度は大目に見てもらえているの。珍獣扱いもされているだろうけれど」
T「ちなみに食の話題が多いため、一部では〝貢ぎ甲斐のある人〟としても有名である」
涼「伊織ちゃんならどこでもやっていける! って、幼馴染みなら言ってあげるべきだったなぁ。御免ね」
伊織「ううん。お互い高校デビュー成功できて良かったじゃない。それに――」