ソクラテスと林檎の木
◇
次の日、いつものように朝8時に起きて支度をしてから会社へ向かった。わたしが起きても例の部屋から美少年が出てくることはなく、『無理して起きてこなくていい』と言ったのは自分だけれど、薄情な年下だなと思った。まあいいんだけど。
.
:
いつもより少し早めに仕事を終えて19時45分。マンションへ帰ってポストを覗くと、きちんと鍵が入っていた。そのことに安堵しつつリビングのソファへとダイブする。大きいソファを買ってよかった。お金は元彼と折半したけど、今や完全にわたしのもの。
思えば昨日はあまり深く眠れなかった。というか、ここ最近ずっと、どこか浅い眠りを繰り返している。
今日が金曜日でよかったな。お団子に結っていたセミロングを解いて溜め息を吐くと、なんだかどっと疲れが降りてきた。今週は流石にいろんなことがありすぎたよ。
ご飯を食べるのもお風呂に入るのもメイクを落とすのだって面倒くさい。いっそのことこのまま消えられたら楽なのに。わたしがいまこの世からいなくなっても、誰も困らない。せいぜい家族が悲しんで、職場でちょっと噂になるくらいだ。
ちっぽけな人間なのに、どうして生きているんだろう。26歳。人生の楽しさをグラフで表せるのなら、きっとピークはとうに過ぎてしまったのだろう。
─────ピンポーン
ソファで項垂れていると、突然インターホンが鳴った。こんな時間に珍しい。渋々立ち上がってモニターを確認すると、昨日ぶりの美少年─────早川駿くんが立っていた。
次の日、いつものように朝8時に起きて支度をしてから会社へ向かった。わたしが起きても例の部屋から美少年が出てくることはなく、『無理して起きてこなくていい』と言ったのは自分だけれど、薄情な年下だなと思った。まあいいんだけど。
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いつもより少し早めに仕事を終えて19時45分。マンションへ帰ってポストを覗くと、きちんと鍵が入っていた。そのことに安堵しつつリビングのソファへとダイブする。大きいソファを買ってよかった。お金は元彼と折半したけど、今や完全にわたしのもの。
思えば昨日はあまり深く眠れなかった。というか、ここ最近ずっと、どこか浅い眠りを繰り返している。
今日が金曜日でよかったな。お団子に結っていたセミロングを解いて溜め息を吐くと、なんだかどっと疲れが降りてきた。今週は流石にいろんなことがありすぎたよ。
ご飯を食べるのもお風呂に入るのもメイクを落とすのだって面倒くさい。いっそのことこのまま消えられたら楽なのに。わたしがいまこの世からいなくなっても、誰も困らない。せいぜい家族が悲しんで、職場でちょっと噂になるくらいだ。
ちっぽけな人間なのに、どうして生きているんだろう。26歳。人生の楽しさをグラフで表せるのなら、きっとピークはとうに過ぎてしまったのだろう。
─────ピンポーン
ソファで項垂れていると、突然インターホンが鳴った。こんな時間に珍しい。渋々立ち上がってモニターを確認すると、昨日ぶりの美少年─────早川駿くんが立っていた。