復讐殺人日記
『それって……』
すでになにかに感づいて様子で周囲を見回す。
『まんまだよ。ここを渡ってもらうから』

私が指差したのは保人が今まさに飛び出してしまいそうになった大通りだ。
ここは車通りが多く、横断歩道もないためスピードも出ている。

大通りチャレンジをするにはうってつけの場所だった。
『し、死ぬかもしれないじゃないか』

『そうだね。でも死ぬのはあんただから大丈夫』
瑞穂がそう言って笑った。
日奈子も貴斗も笑っている。

悪いことをしている自覚なんて少しもなかった。
これは悪人への制裁だ。

大人たちが隠蔽したから、私たちが自分の手で判決を下しているだけだ。
そして今回はそれが大通りチャレンジになっただけのこと。

『無理だ。できない』
保人が行き交う車を見て首を左右に振る。
『できないじゃねぇんだよ。お前に拒否権はねぇんだ』

貴斗が保人の肩を掴んで言う。
その指先が保人の肩に食い込んでいるのがわかった。
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