復讐殺人日記
「数学の授業、本当に眠かった」
「わかる。給食の後って眠いよねぇ」

そんな他愛のない会話をしながら前髪を整えていたときだった。

ふいに自分が映っているかがの後方に黒い影が見えて「えっ！？」と、声を上げて振り向いた。

だけどそこには誰もいない。
「どうかした？」

瑞穂に聞かれて「ううん。ただの見間違い」と返事をして鏡に顔を戻す。

その瞬間、鏡に映った自分の顔が真っ黒に歪んでいたのだ。
「きゃああ！」

悲鳴をあげてその場に尻もちをつく。

心臓がドクドクと早鐘を打ち、全身から血の気が引いていくのを感じた。

「ちょっとどうしたの愛花？」
「い、いま鏡に……」

鏡の指差そうとするのだけれど、体が震えてうまくいかない。
そうこうしている間に個室に入っていた日奈子が騒ぎに気がついて出てきていた。

「愛花ちゃん、どうしたの？」
瑞穂と日奈子に両腕を支えられてようやく立ち上がることができた。

恐る恐る鏡を覗き込んでみたけれど、そこにはもうなにも映っていなかったのだった。
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