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2022年インターネット怪談『ぬらつぬ』の掲示板での書きこみ
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怪談に飢えてるので募集しま~す 《ジャンル・怪談》
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1 怪談大好き 2022年10月7日(金) 16時11分23秒
怪談大好きです!
めっちゃこわいの募集しま~っす(^▽^)/
雑食ですが、スプラッターとかグロい系はちょっと勘弁です^^;
それ以外は何でもOK☆彡
待ってま~す(⌒∇⌒)
2 じっかぐらし 2022年10月8日(土) 20時17分51秒
じゃあ、最近学校で聞いた『都市伝説』ってやつなんですけど。
はじめて、書いてみます。
自分は、いわゆるネット廃人ってやつでして。
ふだんの生活に支障をきたすくらいに、ネットに没頭しちゃってる人間なんですけど。
いちばんひどい日だと、寝る以外の時間は、スマホあるいはパソコンを見ている。
つねに、からだの半分をインターネットの世界に浸からせていないと落ち着かない、そういうやつなんですよね。
なんで、ネットで流れてくる情報はだいたい把握しているし、ふつうよりはネットのことについて、くわしいと、まあ自負してまして。
そんなんだから、インターネットで流行っている怪談っていうのも、いやでも目に入ってきちゃうんです。
自分は毎日毎日インターネットに住んでるだけあって、怪談や都市伝説なんかも、わりと知ってるほうなんですけど。
別に好きこのんで知りたいわけじゃないんですよ。
だって、怖いじゃないですか。
でも、インターネットの人ってけっこう怖い話、好きらしくて。
定期的に創作怪談だとか、創作都市伝説なんかが流行り出すんですよ。
……いや、創作ですよ、誰かが作ってる話。
本物なわけないでしょう。
自分、幽霊とか妖怪とか怪異とか、信じてないんです。
だって、見たことないもの信じろなんて、むりな話じゃないですか———なんて、思ってました。
あのアカウントに、フォローされるまでは。
自分はネット廃人なので、たくさんのSNSのアカウントを持っています。
以前は、青い鳥がアイコンだったSNSのことなんですけど。
ある日、そこで不審なアカウントにフォローされたんです。
「モテナシ」っていう名前のアカウントです。
モテナシ?
変な名前だな。
ああ、モテなし。
つまり、モテないから、モテナシかー? なんて。
自分もインターネット上では、たいがいな名前を使ってきましたが。
自分の恋愛遍歴を暴露するような名前を堂々とつけるなんて変わったひとだなーなんて面白おかしく思ったので、モテナシさんのことは、強く印象に残りました。
でも、自分のアカウントは、交流のあるアカウントのみフォローをすると決めていたので、フォロー返しをすることはありませんでした。
モテナシさんからフォローされて、三日くらいたったころだったでしょうか。
モテナシさんから、DMがきたんです。
自分は、誰に対してもDMを解放していたので、変には思いませんでした。
ですが、DMの内容はとても不審なものでした。
「待っているのですが、いつですか?」
なんのことだろうと思いました。
もしかして、フォロー返しのことだろうか。
フォローをしないと、怒るタイプの人だったのか。
面倒な人に目をつけられてしまったな、と思いつつも、これ以上怒らせてはいけないと、極力ていねいに返信しました。
「すみません。自分は交流のあるかたのみ、フォローを返しているので、モテナシさんともあるていどは交流を深めてからと思っています。それから、相互フォローになりましょう」
返信は、数秒もたたずに返ってきました。
「あなただけをフォローしています」
たしかに、モテナシさんは自分だけをフォローしていました。
しかし、そんなことはいまは関係ありません。
次も、できるかぎり、ていねいに返信を書きました。
「申し訳ないのですが、いまはフォローを制限させてもらっている状態です。もし、ご気分を害されたなら、フォローは外してもらってけっこうですので」
一秒もたたずに、返信が返ってきました。
「待っているのですが、いつになりますか? あなただけをフォローしています」
ゾッとしました。
同じメッセージばかり、どうして。気味が悪い。
いったい、どういうつもりなのだろう。
返信するのを迷っていると、モテナシさんから、またDMが届ました。
「外しますか?」
とたん、耳のそばで、グギッと生々しい音が鳴りました。
するとモテナシさんから、またDMが届いたんです。
「あなただけをフォローしています」
あごの下が、かくかくと揺れている感覚します。
だ液がうまく飲みこめず、あごの下にたまっていく感覚がします。
あごが、外れている。
あの音は、自分のあごが外れた音だったのです。
わけがわかりません。
自分は、顎関節症でもなければ、これまでの人生であごが外れたことは一度もありません。
目の前のSNSのDM画面を、目が乾くまで見つめ続け、ある考えに至りました。
―――まさか、そんなはず……。
そんな、うそみたいなこと。
そう思いながらも、検索エンジンを開き、おそるおそる文字を打ちこんでみたんです。
『モテナシ アカウント とは』
すると、とあるサイトが一件だけヒットしました。
震える指先で、マウスをクリックしました。
『モテナシというアカウントにフォローされたら、しなければならない五つのこと』
呆然としました。
そこにはこう書かれていたんです。
『まず、モテナシに「フォローしていただき、ありがとうございます」と、DMを送ります。
次に、フォローしているアカウントを、モテナシ以外すべて外します。
モテナシがそのときにアイコンにしているものの画像をDMで送ります。(モテナシのアイコン画像をそのまま送るのは、ぜったいNG)
続いて、「おもてなしさせていただきました」とDMします。
最後に、フォローを返します。
これを手順通りにすれば、モテナシはフォローを外してくれます。
フォローをしなければ、あなたが外されてしまいます。
外せるものはすべて、外していくみたいなので、気をつけてください』
モテナシ、とは「おもてなし」のことだったのです。
外れたあごをおさえながら、恐怖にとらわれた手でマウスを操作し、なんとかモテナシのアイコン画像を確認しました。
木の皿に、色んな種類のおかしが盛られた画像でした。
木の皿なんか、このせまいアパートの自室にはありません。
部屋中の、ありったけの菓子を百均の皿に乗せました。
ふと、顔をぬぐうと、びっしょりと濡れている。
いつのまにか、泣いていたようでした。
あとは、手順通りに行いました。
モテナシに「フォローしていただき、ありがとうございます」と、DMを送りました。
長年つきあいのある、なかよしのフォロワーを、モテナシ以外すべて外しました。
菓子が乗った皿の写真を撮り、モテナシにDMで送りました。
これでいいのだろうか、と恐怖におびえながら。
続けて、「おもてなしさせていただきました」とDMをしました。
最後に、モテナシにフォローを返します。
ここまで呼吸をしていなかったようで、溺れたあとのような勢いで、息を吸いこみました。
いいんだよな、これで。
これでモテナシは、フォローを外してくれるんだよな。
焦りと、緊張と、恐怖で、パソコンの前でずっと、組んだ手に額をつけていました。
数分たったとき、パッとDMのアイコンに赤いマークがつきました。
モテナシからのDMでした。
「ありがとうございました。外しておきます」
「え―――?」
一瞬、目の前が真っ暗になったように思いました。
ガクン、と外れたあごが揺れて、そのまま引き裂かれるような痛みが走ったんです。
「がががっあがっ、ああっ―――」
手順通りにやったのに。
間違いがあったのか。
やはり、もてなしのお菓子が、いけなかったのか。
それとも、すでに手遅れだった……?
上あごと下あごが、裂かれていく痛みに耐えられなくなり、叫び声をあげたとき。
バキッと、生々しい音が部屋に響いたんです。
パソコンに映る、自分のアカウント画面。
「フォロー0 フォロワー0」
急いでDMを開くと、モテナシとのやりとりだけが、ごっそりとなくなっていました。
自分は、間に合ったのか――?
外れたあごをさすると、痛みはあったものの、すっかり元通りにハマっていました。
念のため、接骨院の予約をしました。
それでも、自分はネット廃人を辞められません。
だって今ではこうして、怪異の存在を信じ、怪異の存在をみなさんに広めているんですから。
怪談に飢えてるので募集しま~す 《ジャンル・怪談》
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1 怪談大好き 2022年10月7日(金) 16時11分23秒
怪談大好きです!
めっちゃこわいの募集しま~っす(^▽^)/
雑食ですが、スプラッターとかグロい系はちょっと勘弁です^^;
それ以外は何でもOK☆彡
待ってま~す(⌒∇⌒)
2 じっかぐらし 2022年10月8日(土) 20時17分51秒
じゃあ、最近学校で聞いた『都市伝説』ってやつなんですけど。
はじめて、書いてみます。
自分は、いわゆるネット廃人ってやつでして。
ふだんの生活に支障をきたすくらいに、ネットに没頭しちゃってる人間なんですけど。
いちばんひどい日だと、寝る以外の時間は、スマホあるいはパソコンを見ている。
つねに、からだの半分をインターネットの世界に浸からせていないと落ち着かない、そういうやつなんですよね。
なんで、ネットで流れてくる情報はだいたい把握しているし、ふつうよりはネットのことについて、くわしいと、まあ自負してまして。
そんなんだから、インターネットで流行っている怪談っていうのも、いやでも目に入ってきちゃうんです。
自分は毎日毎日インターネットに住んでるだけあって、怪談や都市伝説なんかも、わりと知ってるほうなんですけど。
別に好きこのんで知りたいわけじゃないんですよ。
だって、怖いじゃないですか。
でも、インターネットの人ってけっこう怖い話、好きらしくて。
定期的に創作怪談だとか、創作都市伝説なんかが流行り出すんですよ。
……いや、創作ですよ、誰かが作ってる話。
本物なわけないでしょう。
自分、幽霊とか妖怪とか怪異とか、信じてないんです。
だって、見たことないもの信じろなんて、むりな話じゃないですか———なんて、思ってました。
あのアカウントに、フォローされるまでは。
自分はネット廃人なので、たくさんのSNSのアカウントを持っています。
以前は、青い鳥がアイコンだったSNSのことなんですけど。
ある日、そこで不審なアカウントにフォローされたんです。
「モテナシ」っていう名前のアカウントです。
モテナシ?
変な名前だな。
ああ、モテなし。
つまり、モテないから、モテナシかー? なんて。
自分もインターネット上では、たいがいな名前を使ってきましたが。
自分の恋愛遍歴を暴露するような名前を堂々とつけるなんて変わったひとだなーなんて面白おかしく思ったので、モテナシさんのことは、強く印象に残りました。
でも、自分のアカウントは、交流のあるアカウントのみフォローをすると決めていたので、フォロー返しをすることはありませんでした。
モテナシさんからフォローされて、三日くらいたったころだったでしょうか。
モテナシさんから、DMがきたんです。
自分は、誰に対してもDMを解放していたので、変には思いませんでした。
ですが、DMの内容はとても不審なものでした。
「待っているのですが、いつですか?」
なんのことだろうと思いました。
もしかして、フォロー返しのことだろうか。
フォローをしないと、怒るタイプの人だったのか。
面倒な人に目をつけられてしまったな、と思いつつも、これ以上怒らせてはいけないと、極力ていねいに返信しました。
「すみません。自分は交流のあるかたのみ、フォローを返しているので、モテナシさんともあるていどは交流を深めてからと思っています。それから、相互フォローになりましょう」
返信は、数秒もたたずに返ってきました。
「あなただけをフォローしています」
たしかに、モテナシさんは自分だけをフォローしていました。
しかし、そんなことはいまは関係ありません。
次も、できるかぎり、ていねいに返信を書きました。
「申し訳ないのですが、いまはフォローを制限させてもらっている状態です。もし、ご気分を害されたなら、フォローは外してもらってけっこうですので」
一秒もたたずに、返信が返ってきました。
「待っているのですが、いつになりますか? あなただけをフォローしています」
ゾッとしました。
同じメッセージばかり、どうして。気味が悪い。
いったい、どういうつもりなのだろう。
返信するのを迷っていると、モテナシさんから、またDMが届ました。
「外しますか?」
とたん、耳のそばで、グギッと生々しい音が鳴りました。
するとモテナシさんから、またDMが届いたんです。
「あなただけをフォローしています」
あごの下が、かくかくと揺れている感覚します。
だ液がうまく飲みこめず、あごの下にたまっていく感覚がします。
あごが、外れている。
あの音は、自分のあごが外れた音だったのです。
わけがわかりません。
自分は、顎関節症でもなければ、これまでの人生であごが外れたことは一度もありません。
目の前のSNSのDM画面を、目が乾くまで見つめ続け、ある考えに至りました。
―――まさか、そんなはず……。
そんな、うそみたいなこと。
そう思いながらも、検索エンジンを開き、おそるおそる文字を打ちこんでみたんです。
『モテナシ アカウント とは』
すると、とあるサイトが一件だけヒットしました。
震える指先で、マウスをクリックしました。
『モテナシというアカウントにフォローされたら、しなければならない五つのこと』
呆然としました。
そこにはこう書かれていたんです。
『まず、モテナシに「フォローしていただき、ありがとうございます」と、DMを送ります。
次に、フォローしているアカウントを、モテナシ以外すべて外します。
モテナシがそのときにアイコンにしているものの画像をDMで送ります。(モテナシのアイコン画像をそのまま送るのは、ぜったいNG)
続いて、「おもてなしさせていただきました」とDMします。
最後に、フォローを返します。
これを手順通りにすれば、モテナシはフォローを外してくれます。
フォローをしなければ、あなたが外されてしまいます。
外せるものはすべて、外していくみたいなので、気をつけてください』
モテナシ、とは「おもてなし」のことだったのです。
外れたあごをおさえながら、恐怖にとらわれた手でマウスを操作し、なんとかモテナシのアイコン画像を確認しました。
木の皿に、色んな種類のおかしが盛られた画像でした。
木の皿なんか、このせまいアパートの自室にはありません。
部屋中の、ありったけの菓子を百均の皿に乗せました。
ふと、顔をぬぐうと、びっしょりと濡れている。
いつのまにか、泣いていたようでした。
あとは、手順通りに行いました。
モテナシに「フォローしていただき、ありがとうございます」と、DMを送りました。
長年つきあいのある、なかよしのフォロワーを、モテナシ以外すべて外しました。
菓子が乗った皿の写真を撮り、モテナシにDMで送りました。
これでいいのだろうか、と恐怖におびえながら。
続けて、「おもてなしさせていただきました」とDMをしました。
最後に、モテナシにフォローを返します。
ここまで呼吸をしていなかったようで、溺れたあとのような勢いで、息を吸いこみました。
いいんだよな、これで。
これでモテナシは、フォローを外してくれるんだよな。
焦りと、緊張と、恐怖で、パソコンの前でずっと、組んだ手に額をつけていました。
数分たったとき、パッとDMのアイコンに赤いマークがつきました。
モテナシからのDMでした。
「ありがとうございました。外しておきます」
「え―――?」
一瞬、目の前が真っ暗になったように思いました。
ガクン、と外れたあごが揺れて、そのまま引き裂かれるような痛みが走ったんです。
「がががっあがっ、ああっ―――」
手順通りにやったのに。
間違いがあったのか。
やはり、もてなしのお菓子が、いけなかったのか。
それとも、すでに手遅れだった……?
上あごと下あごが、裂かれていく痛みに耐えられなくなり、叫び声をあげたとき。
バキッと、生々しい音が部屋に響いたんです。
パソコンに映る、自分のアカウント画面。
「フォロー0 フォロワー0」
急いでDMを開くと、モテナシとのやりとりだけが、ごっそりとなくなっていました。
自分は、間に合ったのか――?
外れたあごをさすると、痛みはあったものの、すっかり元通りにハマっていました。
念のため、接骨院の予約をしました。
それでも、自分はネット廃人を辞められません。
だって今ではこうして、怪異の存在を信じ、怪異の存在をみなさんに広めているんですから。