すべてはあの花のために②
父母の言葉に、葵以外が驚きを隠せない。
「か、母さん父さん、どういうこと?」
「そのままの意味だよあかね」
「あたしたちはあなたの親ですもの。ちゃんとあなたが本当にしたいことがあれば、そちらをさせてあげたいの」
「で、でも……!」
「今はそんなに稽古は厳しくしてないんだろう? あかねには時々入ってもらうぐらいにしてもらえれば、足は使えなくても、別の方法でおれが生徒たちに教えることができるよ」
「お義父様。この人は今、一生懸命柔道の絵を描いているんです。体で教えることはできないから紙に表現して、口と手でしっかり教えられるように毎日頑張ってるんですよ」
二人の提案に、アサジは開いた口が塞がらないようだった。
「だから、おれもちゃんと稽古つけてあげられる。それに、女房も協力してくれるって」
「ここに嫁いできたんですもの。初めから覚悟はしています」
「しかしなずなさん、あんた仕事は……」
「あたしが今までたくさん働いてきたのは、いつ息子が正直になってもいいように。この道から逸れてもいいように。大学に行きたいって言うなら行かせてあげたいと思っただけです。もう、それぐらいは準備はできていますよ」
「まああかねには、大人になったらその分、頑張ってもらおうと思ってますけど?」なんて言いながら、ナズナはクスッと笑みをこぼす。
「だから、まずはおれたちがここの道場を守ってみせるよ。大丈夫。おれはあなたの子どもで、彼女は奥さん。そこら辺の奴らよりは強いから」
「だから、この子にもう少しだけ自分の好きなことをやらせてもらえないでしょうか」
そう言って二人は深く頭を下げる。
そんな二人にアサジは固まってしまった。アカネも同様に動けない。
「アカネくん」
葵がそう言うと、彼はギギギ……とこちらへ首を動かす。
「君の夢は、君一人のもの? ここまで君のことを思って頭を下げているのに、君はここで描くのを止めるちゃうの?」