すべてはあの花のために②

「きゃあーっ!!」

「――?! キサ!!」

「はなっ、して!」

「こっちのお嬢ちゃんは、ちょーっと黙っといてなあ」

「キサちゃん……!」


 大男に背後から腕を捕まれたキサは、鳩尾に一発食らい、そのまま気を失う。
 葵とチカゼは慌てて助けに入ろうとしたが、その行く手を大の男たち五、六人に阻まれてしまった。


「お嬢ちゃん。伝言通り、今度は手加減無しで来たったで」


 その中の一人。関西訛りの男の声に、葵の体は何故か身震いする。
 覚えはない。けれどその声に、指先から徐々に体が冷たくなっていくのを感じた。

 まるで――……そう。海の底に沈んでいくみたいに。


「はあ? 何言って……」

「そこのチビ助は知らんの? 伝言ができんのはお嬢ちゃんの方やんなあ」


 その挑発に、活を入れるように声を張る。


「違う。言う必要がないと思ったからだ」

「でも今、こんなことになって実際のところ後悔しとるんとちゃうん」


 その問いに答えないまま、葵は背中にチカゼを隠した。


「……おい。お前こいつらに何言ったんだよ」

「それは後だ。先にキサちゃんを助けないと……先生にぶっ殺される」

「それは間違いねえけど、この時点ですでにやべえとオレは思う」

「あはは。ですよねやっぱり」


 手探りで背後の彼の制服を掴む。


「チカくん」

「ん」

「絶対油断、しないで」


 伝言を頼んだあの三人はここにはいない。葵の頼み通り、伝言を受け取った人間が来たのはいいが……チカゼの実力では五分五分。下手をすれば劣る。
 何とかしてキサを助け出し、ここから二人を逃がしたいところだが……。


「そこのチビ助は引っ込んどいてくれるか。俺らが用事あるんはお嬢ちゃんだけやねん」


 男ははっきりと口にした。
 彼らの狙いが『葵』ただ一人だと。


「ッ、余計なことを……」

「やっぱりお前なんじゃねえかよ」


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