若頭は拾い猫を甘やかしたい。
「都!」


焦るちーちゃんの声が聞こえると共に、私の倒れかけていたはずの体は誰かによって支えられた。

そしてその瞬間、



キャー!!!!!!!!


と、周りの女子たちの黄色い悲鳴が飛び交った。


私は体を支えてくれた人にお礼を言おうと思って振り返ると、そこには人だかりの中心の王子…が居た。



あぁ、最悪。


こんなの目立ってしまって当然だ。
急いで離れよう。



「大丈夫?」


「あ、はい。すみません。ありがとうございました。」



王子に顔を覗かれる前にパッと離れて、急いでちーちゃんの方へと駆け寄っていく。



「都!大丈夫?」


「うん、大丈夫。」


「盛大に目立ってたね…。」



ほんと。
人に見られるのが1番嫌なのに。


今だって、周りの女の子たちからの視線が痛い。



「ちーちゃん、早く教室に入ろ。」


「うん、そうね。」



少し早歩きで教室の中へと入る。

そんな私の後ろで、王子が怪しい笑みを浮かべていたなんてことには気づくはずがなかった。



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