若頭は拾い猫を甘やかしたい。
暖かい…。


すぅーっと気持ちが軽くなっていく。弥生くんの腕の中が心地よくて目を閉じていると、



「…なんか都、甘い匂いがするな。」


私の髪を撫でていた弥生くんの手が止まってふとそんなことを言われた。



…甘い匂い…??

私は香水とかつけないし、ちーちゃんは甘い匂いというよりは柑橘系でサッパリしている。


人と関わりが無い私が今日関わった人といえば…、




「王子…かな。」



もう弥生くんのお陰ですっかり忘れかけようかしていたのに思い出してしまった。



「…王子?」


ピクっと弥生くんの手が反応するのが分かる。



「うん、王子。ちょっと名前忘れたけど、さっき会った。」


「…は、」


「弥生くん?」



今すごく低い声が聞こえたような気がしたけど。

すると、突然弥生くんに両手で顔をキュッと上に向けられて弥生くんと目が合う形に。



その目はどこか不機嫌なようにも見える。




「都、匂いがついちゃうくらい近くに居たの?」


「…え、多分。ほっぺにチューされたから。」



私がそう言った途端、車内の空気が一気にピリピリし始めて、

目の前の弥生くんの顔は完全に不機嫌になっていた。



「………へぇ。都に、触れたんだ。しかも、この可愛いほっぺにキスだと…??」



「弥生くん、どうしたの。」



「何でもないよ。一旦はやく家に帰ろっか。…柳城、飛ばせ。」



柳城さんにドスの効いた声でそう言うと運転席からは、うっす。と言う柳城さんの声が聞こえて車のスピードが一気に速くなった。



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