君を想う
君を想う
プロローグ
「予科練の身の回りの世話?」
それは、軍からの要請だった。
「ああ、特攻や予科練の暮らす兵舎の掃除、あとは―――手紙の投函なんかをして欲しい」
幼い日から淡い想いを寄せていた立花一翔が自宅を訪ね、中本季世は胸を高鳴るのを感じていた。
「軍の指導教官が、わざわざ来て言うことなのかい?」
叔母の友里恵が訊ねると、一翔は『いや・・』と小さく手を振る。
「手紙の投函は、俺の希望です。基地から出せば、全て検査されます。だから、季世ちゃんにお願いしたいんです」
季世は頷いた。
「分かりました、大丈夫です」
季世は微笑んだ。
(まさか、これがあなたのお父さんと、出会うきっかけになるなんてね)
膨らんだお腹を撫でながら、季世は微笑んだ。
どれも、幸せな記憶だ。
「今日から、お部屋の掃除を担当します。中本季世です、宜しくお願いします」
ペコッと頭を下げる季世に、藤岡智志は明るい笑顔を向ける。
「ああ、こちらこそ宜しく。オレは、藤岡智志」
(私はあの笑顔に恋をした。優しくて、温かい智志さんの人柄を知れば知るほど、予科練という巡り合わせに泣いた)
それは、軍からの要請だった。
「ああ、特攻や予科練の暮らす兵舎の掃除、あとは―――手紙の投函なんかをして欲しい」
幼い日から淡い想いを寄せていた立花一翔が自宅を訪ね、中本季世は胸を高鳴るのを感じていた。
「軍の指導教官が、わざわざ来て言うことなのかい?」
叔母の友里恵が訊ねると、一翔は『いや・・』と小さく手を振る。
「手紙の投函は、俺の希望です。基地から出せば、全て検査されます。だから、季世ちゃんにお願いしたいんです」
季世は頷いた。
「分かりました、大丈夫です」
季世は微笑んだ。
(まさか、これがあなたのお父さんと、出会うきっかけになるなんてね)
膨らんだお腹を撫でながら、季世は微笑んだ。
どれも、幸せな記憶だ。
「今日から、お部屋の掃除を担当します。中本季世です、宜しくお願いします」
ペコッと頭を下げる季世に、藤岡智志は明るい笑顔を向ける。
「ああ、こちらこそ宜しく。オレは、藤岡智志」
(私はあの笑顔に恋をした。優しくて、温かい智志さんの人柄を知れば知るほど、予科練という巡り合わせに泣いた)