超人気美男子に目を付けられた平凡女は平和な寮生活を求めて苦悩する
第36話 初カレ VS 王子様
テラスがキスしていたというのは本当なのだろうか。
やはり、相手はタキノリなのだろうか。
ナミルの前では冷静を装ったが、内心まったく穏やかではなかった。
テラスに告白してから2週間が過ぎた。
あのときのテラスからは、タキノリを特別視するような様子は見られなかっが、ここ数日で何か変化したのだろうか。
本当に2人は恋人同士になってしまうのだろうか。
考えれば考えるほど、いてもたってもいられない気持ちになってくる。
アンセムはテラスと話せていない。今、全力で避けられているのだ。
(テラスに会いたい)
強烈な感情が押し寄せてきた。
アンセムは受付の席を立ち、カイが仕事をしている部屋をノックした。返事を聞いてから中に入る。
「どうした?」
「カイさん、今日はこれで失礼していいですか?」
「いいぞ。用事があるのか?」
「ええ…」
アンセムの表情からカイは何かを読み取ったが、あえて何も言わず早々に帰すことにした。
「お疲れ様」
「はい、すいません。失礼します」
頭を下げて、アンセムは部屋から出た。
そして、図書館を出ると駆け出した。
アンセムが向かったのはアイリの部屋だった。直接テラスの部屋を訪れても、拒否されることはわかっていたからだ。
しかし、留守のようだった。
今はお昼前だが、食堂かもしれない。
そう思ったアンセムは食堂へ向かった。
広い食堂だが、テラスはパンが好きで、パンコーナーの近くにいることが多い。
アンセムは、パンコーナーに一番近い入り口の外から食堂の様子を伺った。
迂闊に踏み込んでテラスに発見されたら、また逃げられてしまう。
「いた」
今まで目撃するのも稀だったのに、見つかる時には見つかるものだ。
テラスとアイリがいた。ライキスとタキノリも一緒だ。
4人は楽しそうに談笑しながら食事をしている。
テラスの隣の席がタキノリだった。
テラスを見るタキノリの眼差しが男のそれだということが、アンセムにはすぐにわかった。
テラスはわかっているのだろうか。
2人は目を合わせて会話をしている。
タキノリがテラスに優しく触れた。テラスは嫌がる様子を見せない。
アンセムは激しくイラついた。認めたくないが、自分はタキノリを羨望している。
アンセムはしばらく立ち尽くしていたが、意を決し4人に近づいた。
少し回り込み、軽食を手にしてテラスの後方から4人に話しかける。
アイリは声をかける前にアンセムに気付いたようだった。
「こんにちは」
ビクン!
テラスがわかりやすく反応する。
恐る恐る振り向くテラス。
そんなテラスを見つめるタキノリ。
「一緒にいいかな?」
「お~お~、やるね~」
ライキスが小声で茶々を入れる。
「全面対決かしら」
アイリがライキスに小声で耳打ちした。
「だめ」
テラスは即断った。
「いいじゃないの」
しかし、アイリが了承する。
「アイリ!」
抗議の声をあげるテラス。
「そこ、座ったら?」
テラスの隣の席を指差した。
「ありがとう」
アンセムは促されるままに座った。
当然アンセムが席に着けば、4人に全く関係ない周囲も、特に女子が注目する。
「久しぶりだね」
何事もなかったかのように、テラスに話しかけるアンセム。
テラスは無言でひたすら目の前の食事を食べ始めた。味がさっぱりわからなくなった。
「アンセムさん、俺たち付き合い始めたんだ」
タキノリが唐突に切り出した。
宣戦布告である。
「知ってるよ」
しかし、アンセムは動じない。
「だったら、人の彼女に馴れ馴れしく話しかけるなよな」
ムッとするタキノリ。
「タキノリは独占欲強かったんだな。男友達も許せないのか?」
「あんたはダメだ」
自分の右と左で言い争いに近い会話をされて、テラスは益々味がわからなくなった。
とにかく、早く食べて席を離れよう。そう思ってパクパクと食べ続ける。
「それはタキノリの勝手な希望で、友達の選択はテラスの自由のはずだよ。…ってまぁ、オレは今テラスに避けられているんだけど」
アイリとライキスは、アンセムとタキノリのやり取りを傍観していた。
すっかり面白がっている。
「そうなのか?」
タキノリの顔が嬉しそうになる。
「嫌われるようなことでもしたんじゃねーの?」
「あれ?タキノリは聞いてないのか?」
「何がだよ」
「聞いてないなら、いいんだ」
「何だよ、気になるだろ」
「なら、後でテラスに聞けばいい」
ぶっ!
飲んでいたスープを噴き出すテラス。
(何のつもりなのよ、アンセムは!)
「大丈夫?」
テラスにタオルを差し出すアイリ。
「ありがと…」
「テラスまで、いかにも意味ありげなリアクションって何だよ」
ますます憮然とするタキノリ。
「テラス」
そんなタキノリに構わず、アンセムはテラスの名を優しく呼んだ。
テラスは無言。目線はテーブルから離さない。
テラスをじっと見つめるアンセム。この距離間が久しぶりだった。
自分の気持ちに気付く前は、こんな近くで他愛のない会話を楽しんでいたのに。
何が原因で、テラスに避けられるようになってしまったのだろう。
アンセムの視線を感じてテラスは落ち着かない。早く、早く食べ終わらなければ。
「前みたいに、また過ごせたらいいのに…」
アンセムの気持ちは無意識な呟きとなった。
タキノリは立ち上がりテラスを自分に引き寄せた。
「うわっ」
驚くテラス。
「テラスは俺の彼女だ。変な目で見るなよ」
アンセムを睨みつけて言うタキノリ。
「変な目?それはタキノリも同じじゃないのか?」
「なっ!」
タキノリはカッと頭に血が上った。
テラスの体が強張る。
「ちょ、ちょっとちょっと!」
穏やかではない雰囲気に、アイリが慌てて止めに入る。
ここは食堂、そして昼食時だ。周りではわかりやすい好奇の目線が飛び交っている。
「タキノリ、とにかく座れよ」
ライキスがタキノリを促す。
「アンセムも、言い過ぎだ。食事の味を落とすような話題は食べ物に失礼だ」
そしてアンセムを制した。
「…そうだな。ごめん…」
アンセムはすぐに謝罪した。
「行こうぜ!テラス!」
タキノリはライキスの言葉を無視して、テラスの手を引き無理矢理席を立たせる。
「う…うん…」
複雑な表情で、テラスはタキノリに従った。
やはり、相手はタキノリなのだろうか。
ナミルの前では冷静を装ったが、内心まったく穏やかではなかった。
テラスに告白してから2週間が過ぎた。
あのときのテラスからは、タキノリを特別視するような様子は見られなかっが、ここ数日で何か変化したのだろうか。
本当に2人は恋人同士になってしまうのだろうか。
考えれば考えるほど、いてもたってもいられない気持ちになってくる。
アンセムはテラスと話せていない。今、全力で避けられているのだ。
(テラスに会いたい)
強烈な感情が押し寄せてきた。
アンセムは受付の席を立ち、カイが仕事をしている部屋をノックした。返事を聞いてから中に入る。
「どうした?」
「カイさん、今日はこれで失礼していいですか?」
「いいぞ。用事があるのか?」
「ええ…」
アンセムの表情からカイは何かを読み取ったが、あえて何も言わず早々に帰すことにした。
「お疲れ様」
「はい、すいません。失礼します」
頭を下げて、アンセムは部屋から出た。
そして、図書館を出ると駆け出した。
アンセムが向かったのはアイリの部屋だった。直接テラスの部屋を訪れても、拒否されることはわかっていたからだ。
しかし、留守のようだった。
今はお昼前だが、食堂かもしれない。
そう思ったアンセムは食堂へ向かった。
広い食堂だが、テラスはパンが好きで、パンコーナーの近くにいることが多い。
アンセムは、パンコーナーに一番近い入り口の外から食堂の様子を伺った。
迂闊に踏み込んでテラスに発見されたら、また逃げられてしまう。
「いた」
今まで目撃するのも稀だったのに、見つかる時には見つかるものだ。
テラスとアイリがいた。ライキスとタキノリも一緒だ。
4人は楽しそうに談笑しながら食事をしている。
テラスの隣の席がタキノリだった。
テラスを見るタキノリの眼差しが男のそれだということが、アンセムにはすぐにわかった。
テラスはわかっているのだろうか。
2人は目を合わせて会話をしている。
タキノリがテラスに優しく触れた。テラスは嫌がる様子を見せない。
アンセムは激しくイラついた。認めたくないが、自分はタキノリを羨望している。
アンセムはしばらく立ち尽くしていたが、意を決し4人に近づいた。
少し回り込み、軽食を手にしてテラスの後方から4人に話しかける。
アイリは声をかける前にアンセムに気付いたようだった。
「こんにちは」
ビクン!
テラスがわかりやすく反応する。
恐る恐る振り向くテラス。
そんなテラスを見つめるタキノリ。
「一緒にいいかな?」
「お~お~、やるね~」
ライキスが小声で茶々を入れる。
「全面対決かしら」
アイリがライキスに小声で耳打ちした。
「だめ」
テラスは即断った。
「いいじゃないの」
しかし、アイリが了承する。
「アイリ!」
抗議の声をあげるテラス。
「そこ、座ったら?」
テラスの隣の席を指差した。
「ありがとう」
アンセムは促されるままに座った。
当然アンセムが席に着けば、4人に全く関係ない周囲も、特に女子が注目する。
「久しぶりだね」
何事もなかったかのように、テラスに話しかけるアンセム。
テラスは無言でひたすら目の前の食事を食べ始めた。味がさっぱりわからなくなった。
「アンセムさん、俺たち付き合い始めたんだ」
タキノリが唐突に切り出した。
宣戦布告である。
「知ってるよ」
しかし、アンセムは動じない。
「だったら、人の彼女に馴れ馴れしく話しかけるなよな」
ムッとするタキノリ。
「タキノリは独占欲強かったんだな。男友達も許せないのか?」
「あんたはダメだ」
自分の右と左で言い争いに近い会話をされて、テラスは益々味がわからなくなった。
とにかく、早く食べて席を離れよう。そう思ってパクパクと食べ続ける。
「それはタキノリの勝手な希望で、友達の選択はテラスの自由のはずだよ。…ってまぁ、オレは今テラスに避けられているんだけど」
アイリとライキスは、アンセムとタキノリのやり取りを傍観していた。
すっかり面白がっている。
「そうなのか?」
タキノリの顔が嬉しそうになる。
「嫌われるようなことでもしたんじゃねーの?」
「あれ?タキノリは聞いてないのか?」
「何がだよ」
「聞いてないなら、いいんだ」
「何だよ、気になるだろ」
「なら、後でテラスに聞けばいい」
ぶっ!
飲んでいたスープを噴き出すテラス。
(何のつもりなのよ、アンセムは!)
「大丈夫?」
テラスにタオルを差し出すアイリ。
「ありがと…」
「テラスまで、いかにも意味ありげなリアクションって何だよ」
ますます憮然とするタキノリ。
「テラス」
そんなタキノリに構わず、アンセムはテラスの名を優しく呼んだ。
テラスは無言。目線はテーブルから離さない。
テラスをじっと見つめるアンセム。この距離間が久しぶりだった。
自分の気持ちに気付く前は、こんな近くで他愛のない会話を楽しんでいたのに。
何が原因で、テラスに避けられるようになってしまったのだろう。
アンセムの視線を感じてテラスは落ち着かない。早く、早く食べ終わらなければ。
「前みたいに、また過ごせたらいいのに…」
アンセムの気持ちは無意識な呟きとなった。
タキノリは立ち上がりテラスを自分に引き寄せた。
「うわっ」
驚くテラス。
「テラスは俺の彼女だ。変な目で見るなよ」
アンセムを睨みつけて言うタキノリ。
「変な目?それはタキノリも同じじゃないのか?」
「なっ!」
タキノリはカッと頭に血が上った。
テラスの体が強張る。
「ちょ、ちょっとちょっと!」
穏やかではない雰囲気に、アイリが慌てて止めに入る。
ここは食堂、そして昼食時だ。周りではわかりやすい好奇の目線が飛び交っている。
「タキノリ、とにかく座れよ」
ライキスがタキノリを促す。
「アンセムも、言い過ぎだ。食事の味を落とすような話題は食べ物に失礼だ」
そしてアンセムを制した。
「…そうだな。ごめん…」
アンセムはすぐに謝罪した。
「行こうぜ!テラス!」
タキノリはライキスの言葉を無視して、テラスの手を引き無理矢理席を立たせる。
「う…うん…」
複雑な表情で、テラスはタキノリに従った。