超人気美男子に目を付けられた平凡女は平和な寮生活を求めて苦悩する

最終話 大人たちは満足な結果に祝杯を挙げる

「乾杯!」

リナとカイは、寮長室で祝杯を挙げた。

「カイの見る目は確かなものね」

リナはカイを褒めた。

「あなたがテラスのお見合い相手にアンセムを推薦してきたときは驚いたけど」

「僕は寮長に相談を持ちかけられたとき、アンセム以外に適任はいないと思ったよ。
誘いが絶えないせいか、アンセムは女の子にドライなところがあったけど、図書館でテラスを見つけては、随分と熱心に注目している様子だったからね」

「最初から2人がまとまると思ってた?」

「う~ん、テラスはともかく、きっかけさえあれば、アンセムがテラスに惹かれるじゃないかとは思ってたよ」

「でも、2人はお見合いするまで話したこともなかったんでしょう?
一体どうしてカイはそう思ったのかしら」

「あの2人は似たもの同士だからね」

「どこが?」

リナには良くわからない。

「恋愛に対する姿勢がそっくりだ。
テラスは口にして出すからわかりやすかったが、アンセムも、本気の恋愛感情がわかっていなかったからなぁ。
それでいて、2人とも何かに真摯に打ち込む姿勢は情熱的だ。
アンセムが熱心に読書するテラスに目を奪われたのも、恐らく何かを一途に取り組む姿勢に惹かれたからだろうな。
あの頃のアンセムは、随分と女関係に疲弊していたし、自分を人として見つめてくれるような相手を求めていたんだと思うぞ。
だとしたら、テラスは最適な相手だからね。
僕の場合は、テラスがアンセムの好意に応えたことの方が、意外だったなぁ」

「アンセムの真心が通じたのね。きっと」

「随分と頑張っていたからね。
いや~、テラスのお陰でアンセムの必死な顔がたくさん見れて愉快だった」

満足そうに酒を飲むカイ。

「相変わらず、寮生いじりが好きねぇ…」

「テラスもアンセムのお陰で随分と変わったな」

「本当に。アンセムには感謝しないとね。
超問題児を更正させた上に、引き受けてくれるんだから」

クスクスとリナが笑う。

「ま、アンセムの苦悩はまだまだ続きそうだけどね」

超のつく奥手のテラスとアンセムの仲が、どれほどの速度で進むのか。
それにアンセムが耐えることができるのか。

「まだまだ楽しめそうだなぁ」

ニヤニヤと不気味に笑うカイに、リナは呆れた。

「あまりからかうのはお止めなさいよ」

「いいじゃないか。僕の趣味だ」

「悪趣味ねぇ…」

「ところで寮長。もう1組、なんとかなりそうな男女がいるんだが」

「あら、誰と誰かしら?」

こうして、大人たちの裏方サポートのお陰で、また1組カップルが誕生するのである。
テラスとアンセムのように。

おしまい。
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