あなたの隣で生きていく
嘘を重ねて
その日を境に私は寝る前に飲んでいた睡眠導入剤を飲むのを勝手にやめた。事故当時も寝ると忘れてしまうと聞いて寝るのが怖くなってしまった時があった。でも身体のためには睡眠は必要だからと言われ、それ以来かかさず飲んでいたものだった。それがないと怖くて眠れないから……
寝なければ忘れないんじゃないかと思ったが……私の頭はそれ以上にポンコツだったみたいで結局は色んなことを忘れてしまっていた。薬を勝手にやめて2日目寝不足がたたったせいで私はバス停を降りた途端とうとう倒れてしまった。
「蛍、蛍っ」
お母さんの悲痛な叫び声を聞きながら私はこれから先、どんなことが起きても一馬のことだけは忘れたくないと思いながら真っ暗な暗闇に落ちていった。
目を覚ますと担当の小鳥遊先生が私を睨んでいた。そしてその横には私の手を握っているお母さんがいた。
「蛍ちゃん、何バカなことをしたの!ちゃんと薬は飲んでって言ったよね?子どもじゃないんだからそれくらいわかるでしょ?」
先生からこっぴどく怒られてしまった。
「先生、ごめんなさい」
申し訳なくて謝ると頭をなでてくれた。
「お母さんから聞いたわよ学校のこと……辛いよね。確かに今すぐに蛍ちゃんを治す薬があればいいんだけど……ごめんね。治してあげられなくて……でもだからって寝ないで生活しようなんて馬鹿なことは考えないで。もし事故にでもあったらどうするの?それこそ取り返しがつかないことになるかもしれないでしょ?先生や周りの人にもっと甘えていいのよ。やっぱり彼氏にも……」
先生がこの先何を言おうとしてることなんてわかってる。一馬を頼れって……でも私にはそれはできない。だから先生の手を握ってお願いした。
「絶対に一馬には言わないで」
「でも蛍ちゃん……」
先生の言葉をさえぎって私はお願いした。一馬には知られたくない。絶対に……
先生はため息をこぼして
「わかった。このまま内緒にしてあげる。でもどうしてか教えてくれる?」
「私、片方の目が見づらいんです」
「えぇ、お母さんから聞いてるわよ」
「昔、一馬が蹴ったボールが目に当たってしまって、それで見えづらくなったんです。そのせいで彼は責任を感じて一緒に通学してくれてるのに毎日記憶がリセットしてるなんて聞いたら、ますます彼は自分より私を優先すると思うんです。それでなくてもその事故のせいで行きたかった学校を諦めたのに……これ以上、彼の重荷になりたくないんです」
私が話し終えると先生は息をフッと吐いた。お母さんから聞いてなかったのだろう。
「そうだったの……彼も辛い思いしたのね」
先生は目を伏せて思案していたようだった。それから私も口を開かなくなり重苦しい空気が病室に広がっていくのを感じた。その空気を変えたのは……
「蛍、大丈夫か?」
一馬が額に汗をかきながら病室に来てくれた。きっと学校が終わってから走ってきてくれたんだろう。あの事故以来、毎日帰ったか連絡くれるから。
「ごめんね〜ただの寝不足。受験生でもないのにごめんね心配かけて」
私はなるべく明るく声をかけた。でも一馬の顔はスッキリしていなかった。それよりも……
「どうして無理してるんだ?蛍、何か俺に隠してることがあるんじゃないのか?」
一瞬、ドキッとしてしまったが私は何もないように答えた。小鳥遊先生もさっき私から聞いたからだろう。高校生の女の子は色々あって大変なのよ。でももう大丈夫だから。とフォローしてくれた。一馬はまだ疑ってる顔をしていたけどなんとか誤魔化した。このまま何事もないように過ごしていかないといけない。
私はいつまで一馬の隣で嘘をついて彼女のフリができるのだろうか……そんなことを考えていた。
寝なければ忘れないんじゃないかと思ったが……私の頭はそれ以上にポンコツだったみたいで結局は色んなことを忘れてしまっていた。薬を勝手にやめて2日目寝不足がたたったせいで私はバス停を降りた途端とうとう倒れてしまった。
「蛍、蛍っ」
お母さんの悲痛な叫び声を聞きながら私はこれから先、どんなことが起きても一馬のことだけは忘れたくないと思いながら真っ暗な暗闇に落ちていった。
目を覚ますと担当の小鳥遊先生が私を睨んでいた。そしてその横には私の手を握っているお母さんがいた。
「蛍ちゃん、何バカなことをしたの!ちゃんと薬は飲んでって言ったよね?子どもじゃないんだからそれくらいわかるでしょ?」
先生からこっぴどく怒られてしまった。
「先生、ごめんなさい」
申し訳なくて謝ると頭をなでてくれた。
「お母さんから聞いたわよ学校のこと……辛いよね。確かに今すぐに蛍ちゃんを治す薬があればいいんだけど……ごめんね。治してあげられなくて……でもだからって寝ないで生活しようなんて馬鹿なことは考えないで。もし事故にでもあったらどうするの?それこそ取り返しがつかないことになるかもしれないでしょ?先生や周りの人にもっと甘えていいのよ。やっぱり彼氏にも……」
先生がこの先何を言おうとしてることなんてわかってる。一馬を頼れって……でも私にはそれはできない。だから先生の手を握ってお願いした。
「絶対に一馬には言わないで」
「でも蛍ちゃん……」
先生の言葉をさえぎって私はお願いした。一馬には知られたくない。絶対に……
先生はため息をこぼして
「わかった。このまま内緒にしてあげる。でもどうしてか教えてくれる?」
「私、片方の目が見づらいんです」
「えぇ、お母さんから聞いてるわよ」
「昔、一馬が蹴ったボールが目に当たってしまって、それで見えづらくなったんです。そのせいで彼は責任を感じて一緒に通学してくれてるのに毎日記憶がリセットしてるなんて聞いたら、ますます彼は自分より私を優先すると思うんです。それでなくてもその事故のせいで行きたかった学校を諦めたのに……これ以上、彼の重荷になりたくないんです」
私が話し終えると先生は息をフッと吐いた。お母さんから聞いてなかったのだろう。
「そうだったの……彼も辛い思いしたのね」
先生は目を伏せて思案していたようだった。それから私も口を開かなくなり重苦しい空気が病室に広がっていくのを感じた。その空気を変えたのは……
「蛍、大丈夫か?」
一馬が額に汗をかきながら病室に来てくれた。きっと学校が終わってから走ってきてくれたんだろう。あの事故以来、毎日帰ったか連絡くれるから。
「ごめんね〜ただの寝不足。受験生でもないのにごめんね心配かけて」
私はなるべく明るく声をかけた。でも一馬の顔はスッキリしていなかった。それよりも……
「どうして無理してるんだ?蛍、何か俺に隠してることがあるんじゃないのか?」
一瞬、ドキッとしてしまったが私は何もないように答えた。小鳥遊先生もさっき私から聞いたからだろう。高校生の女の子は色々あって大変なのよ。でももう大丈夫だから。とフォローしてくれた。一馬はまだ疑ってる顔をしていたけどなんとか誤魔化した。このまま何事もないように過ごしていかないといけない。
私はいつまで一馬の隣で嘘をついて彼女のフリができるのだろうか……そんなことを考えていた。