すべてはあの花のために③
「きさちゃんも、恋愛してますねえ~」
そんなキサと入れ違いでユズの方へ、カナデが歩いてくる。
「あれ? どうしたの?」
せっかく嬉しそうに技を掛けてもらってたのに……と思っていたら。
「えっと。……隣いい?」
彼は少し申し訳なさそうな、照れくさそうに、そう言ってきた。
ユズは、逆にこっちが迷惑掛けたのにと、苦笑いしながら彼を促す。
「かなくんはMに目覚めたんだねえ」
ユズがにっこり笑ってそう言うと、「ええ?! 違うよ!」と返ってきた。
「何言ってるのユズちゃん。俺、夜はめっぽうドSですよー」
「かなくんそんなの似合わないよ。めっちゃくちゃぴゅあぴゅあなくせに」
ユズがそう言うと、彼はバッと両手で顔を隠していた。
「(そうそう。こういう時々可愛いとこが、あたしは好きなんだあ~)」
ま、もう振られたんですけど。
そう思っていたら、手で顔を塞いでいるにも関わらず、彼はこちらを向いてきて。
「……お。俺がそうなるのは。好きになった子の前でだけ……だから」
そう言う彼の耳は、少しだけ赤い。
「いや、うん。今あたしの前でしちゃいけないでしょうよ。襲うぞ?」
ユズがそう言うと、カナデは慌てて両手を外したが、やっぱり顔は赤かった。
「生殺しなんですけどお~」
そんなカナデを見て、今度はユズが照れる番である。
「ゆ、ユズちゃん!」
カナデはそう言って、今にも襲いかかってきそうなユズを頑張って両手を突っ張って距離を取る。
「(なんだいなんだいっ。そんなに拒否らなくってもいいじゃんかあ)」
ユズも、だんだんわけがわからなくなって、何故かぽろぽろと涙が溢れてきた。
そんなユズに困ったように笑うカナデは、探したけれどハンカチがなかったのか服の袖で拭いてくれる。
「(もう。あたしには。触れてもくれないんだね)」
やさしく触れてくれる、緊張で震えた指が愛おしかった。
でも彼がそうしなかったのは、もう自分に近づくことはないから……ううん。
彼女にだけ、近づきたいから。
「ユズちゃん。俺の話、聞いてくれる?」
落ち着かせようと、目一杯こちらを気遣ってくれる彼に、ユズは断ることなんてできない。
ユズはこくりと頷いて、彼の話を聞く。