すべてはあの花のために③

 カナデはそう言って席を外して仮眠室の方へ行く。


「カナデくんが使えるまでは、とっておこう」

「葵、それは」

「うんっ。それがいいと思うよお!」


 アキラは葵の心配をしてくれたが、アカネは頷いてくれた。


「大丈夫だ。わたしが彼をすくってあげるさ! 金魚すくいは得意だから多分!」

「関係ない……というか多分って」

「あおいチャン頑張ってー!」


「おう!」と言って、葵はカナデが消えていった仮眠室へ足を進めた。


「……茜、何で止めなかった」


 残された二人はと言うと、アキラがアカネにちょっと怒ってるみたいだった。


「何言ってるのあきクン。君のこともあおいチャンはすくってくれたんじゃない?」

「それは、そうだが……」

「あおいチャンならきっと大丈夫だ。おれはそう思ってる」

「茜……」

「だってあきクンを止めたんだよ? 危険なことだったんでしょう? でも彼女は、そんなこと関係ないって言って踏み込んできてくれたんでしょ?」

「ああ、そうだな」

「おれらは彼女を見ててあげないと。そばで。ずっと。見逃してしまわないように」

「俺は負けない」

「負けず嫌いだね。でも、そんなこと言ってたら一生おれには勝てないよ」

「が、頑張る」

「はあい。頑張ってねー?」


 二人は、ははっと笑い合った。


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