姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?

「長く付き合わせてしまい、すまなかった。今日のところは、そろそろお開きにしよう」
　後ろ髪引かれる思いで席を立つ。
「私もいろいろ話ができて楽しかったわ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。部屋まで送ろう」
　彼女をエスコートして部屋まで送る。
「フィアンナ。あいにくと今、チョコレートの手持ちがないんだ」
　フィアンナが扉の向こうに消えていくのを見ながら、無性にこのまま別れるのが惜しくなり、気づけばこんなことを言っていた。
「え？」
「だから今度、土産に持ってきてもいいだろうか」
　あまりにお粗末な再訪の提案に、自分自身内心で苦笑が漏れる。
　振り返ったフィアンナは目をパチパチと瞬き、次いでふわりと微笑んだ。
　その笑みの可愛らしさにドキリとした。
「嬉しい。楽しみにしてるわ」
「また来る」
　再訪の約束が快く受け入れられたことにホッとしつつ、この日は離宮を後にした。