姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 花たちと明確な意思疎通はままならないが、もっと私のためになにかがしたいのだとそんな彼らの優しい思いが感じ取れて嬉しくなる。
 私が光の乙女だというのは、草花たちと私だけの秘密だった。
 しばらく日向ぼっこを楽しんでから、寝転んだままグッとひとつ伸びをする。
「それにしても、ずいぶんと荒れたわね。ロアンとテレサがこの惨状を見たら悲しむでしょうね」
 なにげなく視線を巡らせ、目に飛び込んできた庭の様相に、ため息をこぼした。
 ロアンとテレサは、私を実の孫のように慈しんでくれた庭師の夫妻だ。文字もこの世界の常識も、彼らから教わった。この国の子どもたちが寝物語のように聞いて育つという〝光の乙女〟の伝承を、諳んじて聞かせてくれたのも彼らだった。
 祖父母のように慕った夫妻が引退したのは、もう十二年も前になる。
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