姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 優しい夫妻は隣国に嫁いだ娘さんから同居の誘いを受けても、私をひとり置いていくことを心配して二の足を踏んでいた。しかし当時、既に彼らは六十代後半。〝あのふたり〟に理不尽に庭を荒らされては修復を繰り返すのは老体にずいぶんと堪えていたようだった。別れは辛かったけれど私が背中を押し、ふたりの旅立ちを見送った。
 それ以降、離宮に庭師はいない。いや、夫妻が辞めた半年後にひとりだけ雇われた男がいたが、人目がないのをいいことに僅かながらに置かれていた金目の物を離宮から持ち逃げしたのだったか。いずれにせよ、それから後任の庭師はおらず、私が細々と手を加えてはいるものの力仕事などには手が回りきるわけもなく。
 さらにその頃から、王宮からメイドたちが通って来る頻度がガクンと減った。今では週に一度、食材とリネン類が運び込まれる程度。当然、炊事洗濯も自分で熟していた。
 ──カッ、カッ。
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