姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 旅人を装い、河原で馬の手入れをしていれば、すぐに一行が現れた。花嫁が乗っていると思われる馬車も停車し、スラリとしてひと際見目麗しい騎士が歩み寄る。
「王女殿下が馬車から降りられるようです」
「どれ?」
 騎士の手で扉が開かれ、純白のドレスの裾がチラリと覗く。
 ……あぁ、俺の妻となる女性はどんな人なのだろう。
 高鳴る鼓動を抑えながら注視する。
 ところが、この後俺が目にした光景は、悪夢以外のなにものでもなかった──。

***

 花嫁行列は、タイラント帝国との共同開発区域に入った。そのまましばらく走り、広く開けた河原で馬車は停車した。
 この時の私は、喉の渇きと空腹で限界に近かった。
 扉が引き開けられるや転がるように馬車を降り、川縁に向かって走った。特に、朝から一滴の水も与えられていない喉の渇きは深刻で、形振りなどは構ってはいられなかった。
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