すべてはあの花のために④

「……本来であれば中学に済んでいたのに、それでもこうしてわたし(、、、)を知っていながらも中途半端な時期に編入させてくださり、ありがとうございます」

「だってそれは……」

「わたしの準備が整わず、ご迷惑をお掛けしました」

「――! ……っ、なんで過去形なの」

「今のうちに、お礼をと思いまして」

「葵ちゃん……」


 できることなら、家のためになることなんてしたくない。
 でも、『わたし』はしなければならない。他でもない、『わたし』のために。


「わたしは道明寺の……あの人たちの駒だから。こうするしかありません」


「それでも!」と、しっかり理事長へ視線を合わせる。


「ただでは枯れないと決めました。……足掻いてやりますよ。わたし自身が変えられなくても、誰かがきっと変えてくれるんじゃないかって。わたしは信じてます」

「葵ちゃん……」

「……こればかりは、わたしにはどうすることもできないから」


 肩に、理事長の大きな手がぽんと置かれる。


「……助けてって。言えるわけないじゃないですか。みんなだって。知ったら絶対幻滅する。わたしは。それが一番怖いんです。……大好きなんです。みんなのこと」

「……君にそう思えてもらえて、よかった」

「わたしだって、自分の花を咲かせたい。蕾のまま、枯れたくなんかない。……でも、家はそれを許しません。わたしも、それはできません」

「……それは、どうして?」

「たとえ駒だとしても。こんな気持ちが悪い子でも。たとえ愛をもらわなかったとしても。……ここまで。生きさせてくれたから。そんな家に。刃向かうなんて、できません」

「うん。だから葵ちゃんには、どうすることもできないんだよね」


 大丈夫だよ。ちゃんと、わかっているよ。
 言葉にはしないけれど、彼は何度も、そう伝えてくれた。


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