すべてはあの花のために⑤

「でしょう? だから、最初から無理だったの。でも、ツバサくんがそうしなきゃいけなかったんでしょう?」

「……わからない」

「そう? でも、ツバサくんにできることはこれだと思ったから、ここまでできたんじゃない?」

「……っ」

「その時、自分ができると思ったことを、誰かのためにここまでできたのはすごいことだ。……でもねツバサくん。そろそろ気づいてもいいと思うんだ」

「……な、にを……」


 上を向いて、今にも泣き出しそうなツバサと視線を合わせる。


「それは本当に、ただの自己満足だ」

「――――」


 葵は腕の力を強めた。


「今まではそれしかできなかったからよかったかもしれない。でもツバサくん。そろそろ君も変わらないといけない。いつまでも自分だけが満足するだけでいいのか。このままでいいのか。……それじゃあ、君のしてきたことは無駄になる。今まで君がしてきたことは誰のため? 誰のためにここまで自分を犠牲にしてまで、こんなことをしてきたの」

「……そ、れは……っ」

「今までは君がそうすることで伝えてきたのかもしれない。訴えてきたのかもしれない。でもこのままじゃダメなんだって、君ももうわかってるでしょう? ……君がこのままなら、きっと『彼』も救われないぞ」

「――! ……あ、んた。知って……」

「何にも知らないよ。でも、君にしか救ってあげられないんじゃないのか。なのに君はそのままでいいのか。……君は、きちんと伝えることもせずに、自己満足のまま時が解決してくれるのを待つのかっ!」


 言い切ると同時に、彼の目から涙が流れてくる。


「……。っ、俺だってっ。できることなら、やめたい……っ」


 ぽろぽろと、葵の顔に涙が落ちてくる。


「……最初から。変わりなんてできないって。わかってるんだっ。……でも。ちょっとでも。俺が代わって。あげた。くて……」


 ぽつりぽつりと、まるで雨のように。


「俺にできるのは。これくらいしか、なかったから。……いつか。わかってくれるんじゃないかって。……っ。そう、思って……」


 ツバサの腕が、葵の腰に回る。


「……でも。間違ってた。最初から。ダメだったんだ」

「ツバサくん。それは違う」

「ちがわない」

「だから、そうやって自分がしてきたこと、否定しちゃダメなんだって」

「だって。俺は。間違って……」

「本当に? ツバサくんがそうすることで、救われた人がいるんじゃないの?」

「……でも。助けて。あげられてない」

「でももだってもじゃない! 君はもう子どもじゃないでしょう!」


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