すべてはあの花のために⑤
葵は掲示板にポスターを貼りに行くからと、みんなよりも先に生徒会室を出ることに。隣で作業をしていたオウリとアカネにも一言声を掛けて、全ての掲示板を回る。
「(あっ。もうこんな時間! シント来ちゃってるかも!)」
裏門から学校を出ると、その先には見慣れた黒のリムジン。
「(何か事情がない限り、基本送り迎えは禁止されている。……何も言われないということは、学校側にはすでに了承済みってことか)」
何食わぬ顔で、待っていた車の中に乗り込む。
「……お帰りなさいませ、お嬢様。生徒会の仕事は順調ですか?」
「ええばっちりよ。黙々と『一人で』作業することは苦ではないから」
『一人』というのを敢えて強調して言うと、シントは苦笑を浮かべていたけれど。
「さあ帰りましょ。お父様がお待ちなのでしょう?」
「……はい。それでは、帰りましょう」
葵が修学旅行から帰ってきてからというもの、毎日のように父に呼び出されている。けれど、そんなことは些細な問題だ。
毎日のように迎えに来させられているシントの方が、何倍もつらいに決まってる。
「(……ッ、いつまでシントに盗聴器付けておく気なんだ)」
そのせいでシントは、葵の部屋でさえ素になれないでいる。
「(いつまで、このままなんだろう……)」
握り拳を作った葵は、盗聴器に拾われない程度の小さなため息を落とした。