すべてはあの花のために⑤
「……ははっ。そっかそっか」
近づいて欲しいけど、近づいて欲しくなくて。知って欲しいって思っても、受け入れてもらえるわけないから知って欲しくもない。
すごい矛盾。でもそんなことは、だいぶ前から知ってた。気づいてた。
「(なんだろう。逃がして欲しいのに、そう言われてどこか、安心してる自分がいるんだ)」
急に黙った葵を、みんなが心配そうに見つめている。
「…………勝負だ」
「ん? なんだ葵」
呟いた言葉はただ一人。赤茶の髪の彼にだけは、伝わったみたいだった。
「ははっ。……ううん。期待しとくことにする」
「……あお」
「我慢してくれる方にね」
「………………」
「やっぱり! アキラくん絶対する気なかったでしょ!」
「俺の辞書に『我慢』という文字は」
「だーかーらー飴ちゃんやめないのか!」
「さ、さて。今日も遅い。明日が本番だからな。うん。さっさと帰ろう。そうしよう。うん」
「(逃げたし)」
けれど、その瞳が揺らぐことはなかった。
「(ふふっ。こっちも負けないからね!)」
目で会話して、葵は先に生徒会室をおさらばした。