すべてはあの花のために⑤
「ビックリした? でもおれはずっと前から好きだったよ。髪切ってもらった時にも一応言ったんだけど、あんまり伝わってなかったみたいだから。寧ろはっきり言えてよかったのかな」
本当に、目の前の彼はアカネなのだろうか。
疑いたくなるくらいには、響いてくる声が低音で、どこか男らしく感じた。
「あーあ。……別に今言うつもりなんてなかったのに。なんでおれ、言っちゃったんだろ。そもそも、鈍感すぎるのが悪いでしょ! おれが好きじゃないって? そんなことあるわけないじゃん! 事故ちゅーでも超嬉しかったんだから! お風呂でその熱冷ましてたおれの気持ち知りもしないでっ」
お、男らしさは、すぐに可愛らしさに変わった。
「あんなこと言い出すあおいチャンが悪い! おれは悪くないもん! あー。なんで今言っちゃったのおれ~……」
何をかはわからないが、反省したアカネは頭を抱え込んでしまった。
「あ、あの、あかねくん。ごめんな、」
「何のごめん!? おれ機嫌悪いって言ったでしょ! 今話しかけないで!」
「は、はいっ!」
葵は小さくなって、壁の隅っこに行って床を拭こうかと思ったんだけど。
「……ここには、いて」
彼が手を放さなかったので、隣にすとんと座ることにした。
「……あおいチャンに今言ったって、振られるんだって知ってるんだ」
彼は小さく笑うけれど、手の力は弱まらないまま。
「『振られたでしょ?』って。とーまクンがあおいチャンの返事をみんなに言う前に、そう言ってたかなチャン」
「え。なんでみんなでそんな話してるの」
「だから、きっとあおいチャンは誰とも付き合うつもりはないんだろうなって。……そう思った」
「(スルーなのね)」
「でも、それはずっとじゃないでしょう?」