うしろの正面だーあれ



指が、足が震えているのが分かる。



本当は今すぐにでもタケルの名を呼んで、自分の存在に気付いてほしい。



どういうことか説明してもらいたい。



しかし、今の楓には そんなことすら出来なかったのだ。



ほんの前日、こっぴどくフラレたばかり。



合わせる顔がない。



…いつもと何も変わらなければ、タケルは今日、学校に来ないはずだった。



だから まだ我慢して来れた。



本当は行きたくなかったけれど。



学校ではタケルに会わないという、一種の自信に似たようなものが楓の中には在った。



だからこそ来たのだ。



目が腫れていても、寝癖が直らなくても。



なのに目の前にタケルは、居る。



杏奈の『彼氏』として――…



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