すべてはあの花のために⑥
挿詩 浮き出た文字

それは素敵な物語



 ねえ あなたはしってる?

 こんな素敵な物語

 ひとつの花のお話を



【どうしてわたしは生まれてきたのかな】



 花はいっつもひとりぼっち

 ずっと ずっと ひとりぼっち



【ずっとひとりぼっちなんていやだ】



 その花は進むの 決まった道を

 ただひたすらに その道を

 たった一人で進んでいくの



【こんな道、進みたくなんてない】



 でもね いろんな花が音を奏でるの

 今日もきれいね とてもいい香りね

 でも花は何も思わないの



【なんでこんなこと。したくないよ】



 代わりに言葉を奏でるわ

 わたしに近寄っちゃだめなのよ



【だめ。わたしはもう、汚いもの】



 だって わたしは汚れてる

 みんなを汚したくないんだもの



【わたしから。逃げて】



 もう真っ黒で 小さくなって

 残ったものはとっても少なくても

 花はきちんと進んでいくよ



【黒い花が咲いたらもう……】



 冷たくて 真っ暗で 何も見えない場所に

 どんどん進むよ 行けるとこまで

 時々花は振り返るの



【だからお願い。わたしに近付かないで】



 わたしとお話ししてくれて

 わたしのことを見てくれて

 わたしのことを愛してくれて



【でも。お願い】



 本当に ありがとう



【『わたし』には。気づいて】



 そんなことを思いながら

 花はどんどん黒くなる

 汚くなる 小さくなって

 最後は笑って消えるのよ



【枯れたくなんて。ない】



 だって花はたくさんの花が幸せで

 とっても嬉しいのだから



【『わたし』にお日さまを。返して――】


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