すべてはあの花のために⑥
何でも許される時代が怖い
時刻は20時過ぎ。それからワカバは、トウセイとツバサに連れられ、持っていた薬関連のものを持って、警察へと向かうことに。今は玄関で見送りをしていた。
「日向。ちゃんと話そう。お前のことも教えて欲しい」
「はいはい。気が向いたらね」
返してたヒナタの声は素っ気なかったけど、顔はどこか嬉しそうだった。
「……葵」
「よかったですねツバサくん」
「ああ。お前のおかげだよ」
「……わたしーーーーんだよ」
「ん? 何か言ったか?」
「ううん。なんでもない」
俯く葵の腕をそっと引き寄せ、ツバサは葵を腕の中へ閉じ込める。そんなツバサのいきなりの行動に、身構えることもできないまま葵は体を硬直させた。
「また明日学校で。行けたらだけど」
「ちょっと。イチャイチャすんなら余所でやってよ」
「お。悪い悪い」
「つ、つばさく……!?」
「葵? 俺も言いたいことあるから。覚悟しといて」
終いには頬にキスまで落としてくる始末。耳元で囁かれた低い音に、危うく腰が抜けそうになった。
「……ッ、日向。風呂入れとけ」
「了解」
ツバサはぎゅっと葵の手を握り締める。
「お前、また冷たくなってる」
「え……?」
そんな感じ、全くしなかった。全然気が付かなかった。
「……っ、うん。大丈夫だよ? ありがとう」
「ほんとうにか……?」
「うん。ツバサくんも、トウセイさんとワカバさん待ってますから」
「……葵」
ツバサは、申し訳なさそうな顔で小さく呟く。
「……? はい。なんですか?」
「……お礼。してやりたいけど。多分もうしない。俺はもう、お前のことわかってやりたいがためだけに動くから」
それは、葵の暗い気持ちを黙って聞いておくことはできないということ。
「でも、どうしても吐きたかったら、何も聞かない。お前の心の方が優先だから」
「……ツバサくん……」
「だから遠慮なしに言って。溜めることだけはするなよ。日向みたいに」
「一言余計なんだけど」