すべてはあの花のために⑥
ハルナが死んだのは、オレが小3の冬。年が明けて、もうすぐオレらの誕生日が来る前だった。
……九歳からはもう、オレは一人だった。
あの頃は、みんなもバタバタしてたよ。チカの両親も亡くなったし、アキくんも誘拐されかけてお母さんは重傷。ほんと、みんなにとって厄年だったんだなって。
別居したのはツバサが小学校を卒業してから。母さんに引き取られたオレは、まあ普通に暮らしてた。
でもそれがおかしくなったのは、オレが中学に上がる頃。……母さんが、変な薬に手を出してた。
初めはやめろって言ったんだ。でももう、母さんはずっとおかしかった。我慢してたんだ。
ハルナを死なせたことも、父さんに嫌われたことも、ツバサと離されたことも、…………ハルナが死んだ原因のオレと一緒にいたことも。
でも、なんだかんだ言ってオレのこと、殺そうとはしなかったんだ。
だからオレも、最後まで諦めたくなかったんだけど、……あいつの写真とかさ、そういうの見ただけで暴れるんだよ。母さん。
だから、この家にあったものもだけど、みんなのところにあったものも全部、処分した。……オレが、処分したんだよ。全部。
この時期になると、母さん一番不安定になるんだ。2月の後半休むのはそのせい。
心配してくれてたけど、でも余計に心配掛けたくなかったから、何も言わなかったし、みんなも何も聞かないでいてくれた。
だからおかしくなってからずっと、オレは母さんが落ち着くまではそばにいてあげてた。
ツバサが女の恰好をし始めた時は、本気で引いたよ。本当にそっちに行くのかと思うくらい似合ってたっていうのもあるけど。
まあオレだって着たことあるよ。ぶっちゃけて言うと。だって母さんが着ろって言うんだもん。オレのことハルナだって思ってるし、可愛い服とか着せてきたときはマジかって思ったけど。
まあ、まだそれくらいだったらよかったけど、もうそろそろ限界だったんだろうね。
母さんもほんとおかしくなって、まともに話せないし、自分じゃ何もできなかった。暴れ出したらもう、止まんなかった。
だからあんたが止めた時、ビックリしたんだ。それぐらい母さんはもう限界だったし、……オレも、ヤバかったから。
だからツバサは必死になってた。まああいつは父さんとの方が問題だったけど、それでもオレのことをちゃんと考えてくれてたから、ちゃんと助けに来てくれた。
……あんたも、ありがとう。
お礼は受け取らないんでしょ? だから、この話がそれってことで。