すべてはあの花のために⑥

sideヒナタ

「オレも、あんたと同じ気持ちだよ」

「……？」

「死んでも助けるよ。あんたの大切な奴も、オレが守ってあげる」

「っ、でも。ほんとに、あぶなくって……」

「それでも助けるって、あんたも言ったでしょ？　オレもそうだよ」

「……っ。いやだなあ……」


　葵が、ヒナタの手と服をぎゅうっと握ってくる。


「何がいや？　教えて？」

「……わたしのこと。知られるの」

「…………」

「……君が。危ない目に。遭うこと……」


　自分に体を預けてくる彼女は、酷く苦しげだ。


「残念だけど、そんなことしてくるような奴の方が危ないよ」

「え……？」

「オレを怒らせたら怖いってこと。あんたのこと、そんな大変なことに巻き込んでるの許せない。絶対地獄を見せる」

「……ははっ。とーまさんみたい」

「ごめんけど、オレはマジで容赦しないから。トーマみたいに手加減なんかしないから」

「……とーまさんもたぶんしてないけど」

「それじゃあもっと酷い目に遭わせてやる」

「はは。……そっか。頼もしいね」


　ぐりぐりと、胸の中で嬉しそうに頭を動かしている。


「……もう一つも、大丈夫だよ」

「え……？」

「知られるのが嫌なのは、嫌われると思ってるからでしょ？」

「…………」

「絶対嫌いになんないから。言ってみて？」


　でも、何度やっても葵は首を縦には振らない。


「オレは言ったのに」

「ごめんなさい」

「もういい。オレここで死ぬわ」

「え……!?」


　そう言って、ヒナタは自分の首を自分の手で軽く絞めた。


「ぐえー」

「……!?　だ、だめ……！」

「（いや、こんなもんじゃ死なないけど……）」


　もとより死ぬつもりもないけど、と思っていたら、彼女の瞳が揺れた。


「（え……）」

「だ、め。だめだよ。冗談でも。……そんなこと言わないで。しないで」


　カタカタと震える手で、力の入ってない手で、ヒナタの首に当てた手を下ろそうとする。


「じゃあ、どうしたら教えてくれる？　どうやったら嫌わないって思ってくれる？」

「……っ」

「……なら、言いたくないこと何個ある？」

「……？　い、いっぱい」

「何個？　教えて？」

「……え。ええっと……」


　葵は指を折りながら、数えていく。


「こ、こまかくわけたら。たくさんある、けど。……大きく分けたら。五つとか。六つ。とか……？」

「そう。じゃあ、その中でオレらが嫌うと思うことは？」

「ぜ、ぜんぶ」

「（マジか）」