すべてはあの花のために⑥

　葵の肩に頭を乗せて項垂れる。


「（んー。絶対嫌わないのになあ。どうしたらわかってくれるかな）」

「ひなたくん……？」

「……そのさ、五つとか六つでさ、ランキングつけてみてよ」

「へ……？」

「なんてランキングにする？　『嫌われちゃうかもランキング』とかでいいか普通に」

「え？　え……？」

「ちょっとさ、つけてみて。頭の中で」

「えー……」


　嫌そうではある。でも葵は、素直に目を瞑って考えていた。


「……。で、きた」

「はい。それじゃあ言ってみよう」

「え!?　い、言わないよ……！」

「なんで？　順位つけられたんでしょ？」

「で、できたけど。……どれも絶対嫌われる」

「……ほんとに？」

「うん」

「言ってないのに何でわかるの？」

「言わなくてもわかる」

「どうして？」

「もう嫌われたことがあるから……っ！」

「……！」


　ああそういうことか。過去にそんな経験があったから……って。


「何それ。そんな奴と一緒にしないでよ」

「え。ひ、ひなたくん……？」


　予想以上に、声に苛立ちが籠もる。


「舐めないでよ。オレぶっちゃけみんな以外に友達いないし」

「れ、レンくんがいるじゃん……！」

「あれはクラスメイトって言うんだけど」

「そ、それはそうだけど」

「その中にあんた入ったんだよ？　誇れるよ。賞状あげるね」

「え？　あ、ありがとう……？」

「……オレもやっと。あんたの中入れた」


　ぎゅうっと、彼女を抱き締める。


「頑固者」

「え……？」

「オレは、あんたに勇気を分けてあげたいだけなんだよ」

「え……」

「背中、……押させてよ」

「……！」

「絶対あんたのその、考えってやつも止めてやる」

「ひなた、くん……？」

「掬ってあげるよ。深い海の底からだってなんだって」

「……！」

「だから、……強くしてあげる。背中も押してあげる。勇気、オレがいっぱい分けてあげるから」

「……っ。ひなた、くん……」

「このオレが、助けてあげるって言ってんの。これ以上ない味方がついてんの！　いい加減話せよこのバカ！」

「ば。バカって余計……」


　でも、どこか葵の顔が嬉しそうに緩んでいた。


「……。きらわ、ない……？」

「だからそう言ってるじゃん」

「……。そ、か……」

「……絶対助ける。だから、勇気出して」


　ふっと拘束を解いて、ヒナタはふわりと笑いかける。


「お日様をなくしたお花のあおいさん？　オレがあんたの太陽になってあげるから。どうか話してくれませんか？」


　思った以上にやさしい声が出る。案の定目の前の彼女も驚いたように目を見開いていたけれど。


「はいっ。わたしのお日さま？　聞いてて楽しいものじゃないけど、よければ少しだけ、聞いてくださいな」


　次の瞬間には、嬉しそうに笑ってくれた。