すべてはあの花のために⑥

 それからなんとかヒナタの案内により、葵は無事に学校に着くことができた。


「ありがとうございます。ヒナタくん」

『いいえ』

「それじゃあ授業頑張ってくださいね」

『は? 寝るし』

「ええ……!?」

『誰のせいで寝てないと思ってんの』

「ごめんなさい……」

『冗談だし。謝んないでよ』

「……あの。放課後……」

『……うん。大丈夫だよ』

「……っ」

『大丈夫。ついててあげるから』



 顔を上げると、もう校舎内に入っていると思ったヒナタが、体半分振り返ってくれている。


『だから、勇気出して』

「……っ、はい。ありがとう。ございます」


 満足そうに笑ったあと、『じゃあ放課後にね』と。ヒナタは校舎の中へ入っていった。



「(……さてと。それじゃあわたしは、理事長に会いに行きましょうか)」


 きっとこれが最後の報告。


「(……できて、よかった)」


 もういいよ。誰に聞かれてたって。


「(あーあ。これでわたしはもう、心残りなんてなくなってしまった)」


 ぐっと手に力を入れるけど、上手く力が入らない。


「(手……。冷たいとかもう。わかんない)」


 迫り来る時間との闘い。


「(大丈夫。絶対、大丈夫。わたしはっ、足掻いてやるんだから……!)」


 きっと彼ならいるだろう。そう思って、朝早い理事長室の扉をノックした。


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