すべてはあの花のために⑥
シランはどこかウキウキした様子で、アキラは肩を落としてどんよりした様子で、道明寺を後にすることに。
「……皇様。お父様とはどのような会話をされたんですか?」
「ん? 恐らくだけど、君が考えてることだろうと思うよ」
「……そう、ですか」
「……?」
葵も父も、何の会話をしてそんな顔をしているのだろう。笑っていても、どこか影が差しているような。
「楓お待たせ」
「いえ。今し方来たところでございます」
「………………」
アキラは、カエデを睨んでます。何でお前が知ってるんだと。若干怒っているようで、実は嫉妬だったりします。
「それじゃあ葵さん。今日はこれで失礼するね」
「はい皇様。また是非、お話しましょう」
「うん。そうだね」
葵はにこりと笑って、次にカエデへと向き直る。
「カエデさん? 『お仕事』頑張ってくださいね」
「……はい。ありがとうございます。葵様」
「(……仕事?)」
「皇くん」
首を傾げていると、最後に葵はアキラへと向き直った。
「……今日は、お招きありがとう。道明寺さん」
何となく、名前は呼ばない方がよさそうな雰囲気だったのでそう言ったら、葵は一瞬驚いていたけど、申し訳なさそうに少し笑った。
「楽しんでもらえましたか?」
「ああ。もう少し話したかったなと、思えるほどには」
「……そうですか。それはよかったです。遅くまで今日はありがとうございました。今日は遅いので、早く寝られた方がいいかと」
「気遣いありがとう。でも帰って少しやることがあるのでご心配なく」
こんな話し方をしていて、なんだか最後はおかしくなった。
「それでは皇くん。良いお年を」
「(……新学期まで会わないつもりか)ああ。良いお年を。登校日、楽しみにしてる」
そう言ってアキラは車に乗り込もうとしたが、一旦止まる。
「道明寺さん」
「? はい。なんでしょう」
「……っ、また、学校で」
「……はいっ。もちろんですよ。皇くん!」
いつ消えるのか――それを聞けなかったアキラに、葵は仮面をずらした笑顔で答えてくれた。