すべてはあの花のために⑥
「もう。アキくんもしっかりしてよ。全然アキくんも教えてくれないじゃん」
「だって俺もわかってないんだもん」
「可愛く言ってもダメだから」
「だってほんとに俺も聞きたくってしょうがないのに教えてくんなかったんだもん」
「だもんで何でも解決できると思ってるの」
「そうだもん」
「聞き出せなかったのはアキくんでしょ? 子供の頃の写真と引き替えにでも聞き出せばよかったんだよ」
「……今度はそうするもん」
「(いや、流石にこのことは、たとえ可愛い写真と引き替えでも言えない……)」
「もうみんな使えない。今のとこ、編集でカットするから」
「ええ!?」と声を上げたアカネとカナデとアキラは、小さく小さくなって、両膝を抱えていた。そんな彼らに見向きもしないヒナタは、どこかからもうひとつマイクを取り出し、今度はキサとツバサに投げる。
「いい仕事してね」
「「(すっごいプレッシャーなんだけど)」」
期待の眼差しでオウリとチカゼは見てくるし、ヒナタは『失敗したらわかってるよね?』的な目線でスマホを構えながら訴えている。
一度、ツバサとキサは視線を合わせ、ため息をついた。
「「(……ボケられない)」」
前の人たちがやらかしてくれたので、ボケようと思ってたネタは引き出しにそっとしまっておいた。
「あっちゃん。聞きたいことあるの。あたしたち」
葵は、真っ直ぐ二人を見つめていた。
「……アンタ。アキと結婚、するの……?」
ツバサが、みんなを代表して尋ねる。マイクを持っている手は、緊張なのか怒りなのか小さく震えており、顔は苦しげだ。
答えないままでいると、キサに「あっちゃん。教えて……?」と、控えめだけど凜とした声で催促される。だから、観察をやめて小さく俯いた。
「……一番正しい答えは『わからない』だ」
そう答えた葵に、「どういうことだよ」とチカゼが食いついてくる。
「みんながアキラくんに何を聞いたかはよくわからないけど、アキラくんはあくまで『候補』だよ。だから絶対に結婚するとは限らない」
「じゃ、じゃああーちゃんは、あっくんと結婚するつもりはないんだね?」
オウリの問い掛けに一度目を瞑り、ゆっくりと目を開けて彼を鋭く射止める。
「『わたし』がアキラくんがいいって言ったんだ。『わたし』は結婚するつもりでいるよ」
「葵……」
きっと、カエデから返事をもらったのだろう。アキラは動揺せずにどこか寂しそうにしていた。