すべてはあの花のために⑥
「おれはあおいチャンに傷つけられました!」
「え。いつの話? それ。もしかしてあれ? アカネくんが大事にしてたマミリンのフィギュア壊しちゃったのバレたのかな。わからないように直したつもりだったん」
「何してくれてんのあおいチャンッ?!?!」
「あれ? 違った」
「はい。罪が一つ増えたようです。次カナ、出番だよ」
まさかの自分でバラしちゃったパターンのやつ。
ヒナタはギャーギャーうるさいアカネからマイクを奪い取り、次にカナデへとマイクを渡した。
「アオイちゃん。俺。信じてたのに……」
「……カナデくん」
ぐっと、手に持ったマイクを握りしめ、カナデは俯いている。そんな様子のカナデに、みんなも少しだけ悲しそうな顔を――……。
「俺の愛読書資源ゴミに出したって本当なの!?」
(※愛読書=エロ本)
しなかった▼
「え? うん。あんなもの目に毒だし。気持ち悪いから」
「気持ち悪いて。そこまで言わなくても……」
「はい、使えない。次、ほらアキくんの番だよ」
「え。ヒナくん? 使えないってどういう」
「さっさと返してマイク」
「はい。すみませんでした……」
カナデはしゅんと小さくなりながら、アキラにマイクを渡した。
「……葵」
「アキラくん……」
見つめ合う二人に、みんなは固唾をのむ。
「……っ、あおい」
「……あきら、くん……」
二人は少しだけ苦しそうにお互いを呼ぶ。
「……言いたいこと、あるんだ。俺……」
「うん。……そうだろうね」
ゴクリ。誰かの喉が鳴った。
「……葵っ」
「うん。アキラくん」
アキラはすっと息を吸った。
「明けましておめでとう。今年もよろ」
ペシンッ!! と、アキラの頭は常備スリッパに叩かれた。
どうして叩かれたのかわからないアキラはもちろん不機嫌に。
「タタク、ヨクナイ」
「アキくん。何でロボットみたいになってるの」
「なんでだ。こうやってみんな『無事に』元気で年を開けられたことはめでたいだろう?」
「……まあそうだけど」
アキラの言わんとしていることがわかり、葵は小さく「明けましておめでとう」と返しておいた。