すべてはあの花のために⑥

「え。それならさ、もうその人もチョコ渡せばいいじゃん」

「それが恥ずかしくてそこまでできないから、リボンだけ持っておくんだよ~」

「(それもそれで恥ずかしい人だと思うのはわたしだけか……?)」


 でも、何となく要領は掴めた気がする。


「だったらわたしがチョコに結べばいいのは青と白かな?」

「あと、言えないこともカードと一緒に渡しておいたら?」

「うーん。……それは左手首に巻いてくれてからにするよ。巻いてもらって、ちゃんと『ごめん』って言えてから渡す。こんな伝え方で『ごめん』って言いたい」

「そっかそっか。でも、それも準備しておかないといけないね」

「……キサちゃん、手作り?」

「うん。毎年そうだよー」

「………………」

「あっちゃん?」

「わ、わたし。一応料理はそこそこできると思ってるんだけど、人にあげるってことしたことなくって……」

「なら一緒に作る?」

「で、できれば」

「うん! だったらあたしの家でやろう! ついでに柚子も呼ぼう! 男子禁制にして、お父さん追い出そおー!」

「え。それはサツキさんに悪い」

「いいよ。あんなクソ親父」

「(あれ? もしかして喧嘩中?)」


 な、何とか約束も取り付けて、前日にお泊まり会で女子会もすることになった。


「ちなみに男子も女子も関係ないから」

「え?」

「何かしらの想いを伝えたい人は、このジンクスに乗っかって相手に伝えるってこと」

「……キサちゃん。そのリボンを結ぶ、最終的なジンクスの結果ってどうなるの?」

「ああ、言ってなかったね!」


 キサの話によると、リボンの色でこれも変わってくるらしい。

 赤:恋愛運
 桃:良縁運
 橙:人気運
 黄:対人運
 緑:健康運
 紫:家庭運
 紺:支持力
 青:厄除け
 朱:思いやり
 水:学習力
 白:結婚運
 灰:仕事運
 金:金銭運
 銀:くじ運
 黒:勝負運

 右手に巻かれたらDOWN、左手に巻かれたらUPするらしい。
 最早ジンクスではなくお守りのよう。


「バレンタインだから、殆どが赤か桃か、異常な人は紫のリボン結んで渡してる感じかな。あっちゃん去年ってどうしてたの?」

「…………」

「あっちゃん?」

「な、何か危機感を感じて……」

「逃げたんだ……」

「休みました……」


 そう言う葵に、キサはクスッと笑う。


「今回ばっかりは無理だからね~」

「え。もしかして、逃げた場合のジンクスがある……?」

「うん! それも生徒会にだけね!」


 またかと、頭をがっくり落とした。


「今回は逃げたら悪質なストーカーに遭うらしいからね。気をつけてね、あっちゃん」

「う、うん。気をつける……」


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